その母親の配当の受け取り方は「株式数比例配分方式」という、証券口座に配当が入金される方法でした。しかし、母親はそのことがわからず、銀行口座に入金されるものだとばかり思っていたのです。ここまではよくある話で、本人から電話がかかってきたら、本人確認後にその旨を伝えることができたでしょう。しかし、息子は家族であっても他人は他人。他人の問い合わせに勝手に回答することはできません。
担当者は「一般的な話として、証券口座に配当が入金される株式数比例配分方式という配当の受け取り方がある。その受け取り方を指定しているのではないか。お母さま自身でウェブ画面上で確認してほしい」と回答。しかし相手は、「一般的な話ではなく、母親の口座がどういう受け取り方になっているかを知りたい」「母親はウェブ画面の操作ができないから聞いている」と主張。
言っていることは理解できるものの、そこは担当者も譲れない話。結局その電話口のお客さんは担当者のフルネームを執拗に聞いたり、「いまどこにいるのか。いまからそちらへ行って直接話をつけてやる」などと脅したりしたのだと言います。
個別の事情があるのは理解できますし、融通が利かないと思うかもしれませんが、そこは守らないと金融機関としての信用を揺るがすことになりますよね。
必要書類が揃わないのに…
銀行でよくありがちなのが、必要書類が揃っていないのに証明書を発行しろという要求。これについても、必要書類が揃っていないと発行できないことを伝えて、何とか顧客に書類を用意してもらうほかに手立てがないのですが、こういった対応に対しても「融通が利かない」などのクレームが入ると言います。
ある顧客が銀行窓口で残高証明書を発行してほしいと依頼をしに来ました。しかし、通帳もキャッシュカードもなし、お届け印も持っていない、あるのは免許証のみ。さらに本人ではなく、夫の残高証明書が欲しいと言います。
さすがに本人の来店でもないですし、何より残高証明してほしい口座すらわからない状態でしたが、「名前と住所で検索しろ、電話番号もわかるから十分だ」の一点張り。さすがの担当者も困り果ててしまって、粘り強く交渉して理解してもらおうと努めたらしいのですが、らちが明かず。
その女性は窓口で大きな声を張り上げて「融通が利かない」「家族だからいいだろう、知る権利がある。なぜ権利を妨害されないといけないのか」「だからこの銀行は営業不振なのではないか」などと喚き、ほかのお客さんも眉をひそめていたと言います。実際にこうしたパターンは少なくなく、銀行ではよくあるパターンのクレームなんだとか。しかも、この女性も担当者の人格や容姿を否定するようなことを大声で言って、担当者を困らせたと言います。
まとめ
クレーマーにも色々な人がいますが、今回は金融機関独自の厳しいルールに対して「融通が利かない」と感じる人が多いという印象でした。顧客の大事な資産を預かる金融機関という立場である以上、厳しいルールや決まり事があります。確かに「融通が利かない」と思うこともあるかもしれませんが、それはあくまで顧客を守るために必要なこと。決して担当者の意地悪で言っているわけではありませんから、そこは理解しておきたいものですね。
大塚 ちえ