少子高齢化に伴う労働人口の減少で、深刻な人手不足に直面している日本。2018年6月、政府は経済財政諮問会議で「2025年までに50万人を超える外国人労働者の受け入れを目指す」と発表し、早急に労働力不足を解消しようとしています。一方、政府が外国人労働者受け入れ拡大を決めたことで、「移民が増える」「治安が悪くなるのでは?」といった懸念も出ています。
かつて外国人労働者と言えば、タイやフィリピン、ベトナムなど主に東南アジア圏から、祖国の家族に仕送りをするために日本に出稼ぎに来るイメージが強くありました。他のアジア諸国に比べて日本は労働賃金が高く、働きやすかったからでしょう。
しかし、今でも日本は外国人労働者にとって「働きたい」と思われている国なのでしょうか。
他のアジア圏に比べ、昇給率の低い日本
グローバル人材紹介会社最大手であるヘイズ・ジャパンは、日本・中国・香港・シンガポール・マレーシアの15業界・1244職種の給与水準(実績ベース)と、従業員5000人超を対象に実施した雇用の実態調査を実施。2月7日には、ヘイズ・ジャパンのマネージングディレクター、マーク・ブラジ氏が登壇し、調査結果をまとめた「ヘイズ アジア給与ガイド」の記者発表会が行われました。
「ヘイズ アジア給与ガイド」はヘイズが2008年から毎年刊行しているもので、今回で12年目となります。その結果を見ると、まず、昨年1年間の昇給率は日本が調査国の中で最も低く、「3%以下」と回答した人が約半数もいました。他のアジア圏では、3人に1人以上が「3~6%」と回答しています。
また雇用主を対象に調査した2019年の昇給予測についても、日本は「6%以上」はわずか6%、「3%以下」が52%と高い割合でした。一方他のアジア圏では、「6%以上」は17%、「3%以下」は32%、「3~6%」(38%)が最も多い回答となり、日本が他のアジア圏と比較しても昇給率が低いことが浮き彫りになっています。
ハイスキル人材や女性管理職は海外に流出?
専門業種に関する調査では、「必要なスキルを持った人材を採用できないだろう」と回答したのは日本が61%、アジアが45%、また「ビジネスの目的を達成するために必要な人材がいない」と回答したのは日本が54%、アジアが33%。いずれからも、日本のスキル不足が深刻であることがわかります。
特に、AIやIoT、ビッグデータなどのトップIT人材においては、海外の企業は昇給率が前年比9割増を超えるケースもあるなど、優秀な人材には高額な報酬が支払われています。管理職レベルの人材に対する諸企業の給与を見てみると、日本は中国に倍近く差をつけられるケースもありました。