2025年11月となり、今年も残りわずかとなりました。 日米の金融政策の行方や、物価高と賃上げのバランスなど、景気の先行きに依然として注目が集まっています。

そうした経済環境の中で、これから本格化する冬の寒さとともに、老後資金に対する不安を感じる方も少なくないでしょう。 特に、年金生活に入ったシニア世代にとって、毎月の収支や貯蓄の状況は生活の基盤となる重大な関心事です。

本記事では、金融経済教育推進機構(J-FLEC)や厚生労働省の最新データ、そして総務省の家計調査報告をもとに、70歳代の二人以上世帯の平均・中央値の貯蓄額、公的年金の受給額の実態、そして65歳以上の夫婦世帯の平均的な家計収支を詳細に分析します。

データに基づき、平均的なシニア夫婦世帯が毎月約3万4000円の赤字を貯蓄の取り崩しで補っているという厳しい現実を明らかにし、老後の生活設計における資産運用の重要性にも触れていきます。 老後資金の現実を知り、将来に備えるための第一歩として、ぜひ最後までご一読ください。

1. 70歳代・二人以上世帯、シニアの貯蓄の平均・中央値はどのくらいなのか?

金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」をもとに、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)を確認していきましょう。

※貯蓄額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

70歳代・二人以上の世帯における平均貯蓄額は1923万円となっていますが、これは一部の高額貯蓄世帯が全体の平均を押し上げているため、実態より高めに見える可能性があります。

実態に近い中央値で見ると、貯蓄額は800万円にまで下がっており、多くの世帯がこの水準付近に分布していることがうかがえます。

以下に、各世帯の貯蓄額分布の内訳を示します。

  • 金融資産非保有:20.8%
  • 100万円未満:5.4%
  • 100~200万円未満:4.9%
  • 200~300万円未満:3.4%
  • 300~400万円未満:3.7%
  • 400~500万円未満:2.3%
  • 500~700万円未満:4.9%
  • 700~1000万円未満:6.4%
  • 1000~1500万円未満:10.2%
  • 1500~2000万円未満:6.6%
  • 2000~3000万円未満:8.9%
  • 3000万円以上:19.0%
  • 無回答:3.5%

最も多いのは、金融資産をまったく持たない「貯蓄ゼロ」の世帯で、全体の20.8%を占めています。

一方、3000万円以上の貯蓄がある世帯も約19.0%とほぼ同程度あり、その差が大きいことがわかります。

このように、70歳代の世帯では貯蓄額に大きなばらつきが見られます。

貯蓄が少ない世帯では、年金だけで生活するのが難しいケースも想定されます。