5. 老後の医療費、介護費ってどれくらいかかるの?
シニア世代の医療費は、年齢を重ねるごとにかさんでいくのが一般的です。
厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費(令和4年度、医療保険制度分)」より、60歳以上の各年齢層における、1人当たりの医療費計、および診療費における「入院+食事・生活療養」の割合について見てみましょう。
5.1 【60歳以上】1人あたり医療費計の推移
- 60~64歳:38万円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:37%
- 65~69歳:48万1000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:40%
- 70~74歳:61万6000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:42%
- 75~79歳:77万3000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:45%
- 80~84歳:92万2000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:50%
- 85~89歳:107万1000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:58%
- 90~94歳:117万9000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:65%
- 95~99歳:125万8000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:69%
- 100歳以上:123万2000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:70%
医療費計は、60歳代前半の38万円から90歳代後半の125万円超へと、約3.3倍に増加しています。この金額の増加を特に押し上げているのは、「入院+食事・生活療養」にかかる費用です。
70歳代までは通院が中心ですが、80歳以降では医療費の50%超を「入院+食事・生活療養」のための費用が占め、90歳代では70%に迫ります。
国の高額療養費制度を使っても、毎月の上限額の自己負担に加え、食事代や差額ベッド代(全額自己負担)といった出費が続く点にも留意が必要でしょう。
介護費用についても、生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、一時費用(※1)の合計額で47万円、月々支払う費用はひと月あたり9万円(※2)。もちろん実際にかかる金額は、要介護度や介護をおこなう場所によっても個人差が出ます。
※1:住宅改造や介護用ベッドの購入費など
※2:いずれも公的介護保険サービスの自己負担費用を含む
厚生労働省の「令和6年簡易生命表」における、平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳。長寿時代を見据えたライフプランには、入院が長期化したり、介護にかかる費用、その間の生活を支えるための視点が不可欠と言えるでしょう。
6. 老後に向けて計画的な準備を
本記事では、70歳代・二人以上世帯の貯蓄状況や、老後の生活を支える年金受給額について、最新の資料をもとに解説してきました。
実際の生活を見てみると、「現役時代の生活費」と「老後の生活費」に差がある方は少なくありません。その理由のひとつは、時間の使い方が大きく変わることです。
働いているときは限られた休暇を楽しみに過ごしていた方も、毎日が“休暇”のような生活になると、外出や趣味にかけるお金が増えたり、逆に節約を意識するようになったりと、支出のバランスが変わります。
老後にゆとりを持って暮らすためには、すでに年金生活を送っている世帯の実態を知ることが大切です。そのうえで、自分の家計と照らし合わせてどのくらいの資金が不足するのかを早めに把握し、計画的に準備を進めていきましょう。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「家計調査 家計収支編(2024年)第3-2表」
- 厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費」
- 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命
渡邉 珠紀