5. 年金、天引きのしくみ「仮徴収と本徴収」とは?
公的年金からは、税金や社会保険料(健康保険料・介護保険料など)が天引き(特別徴収)されます。
「天引き額は一年間ずっと同じ」と思いがちですが、実は年度の途中で金額が変わるのが一般的です。
その理由は、年金から天引きされる住民税と社会保険料の計算が、二段階(仮徴収・本徴収)のしくみになっているためです。
5.1 ステップ1:年度前半は「仮徴収」
年金から天引きされる住民税や国民健康保険料などの社会保険料は、前年(2024年)の所得をもとに計算されます。しかし、その正式な年額が確定するのは毎年6月~7月頃です。
そのため、金額が確定していない年度前半(4月・6月・8月支給分の年金)では、まず前年度2月と同額が暫定的に天引きされます。これを「仮徴収」と呼びます。
5.2 ステップ2:年度後半は「本徴収」
前年の所得が確定し、その年度に支払うべき社会保険料の正式な年額が決まると、徴収方法が切り替わります。
まず、確定した年額から、仮徴収として支払った合計額を差し引きます。そして、残った金額を年度後半の支給回数で割って天引きします。これが「本徴収」です。
多くの場合、本徴収は10月支給分からですが、自治体によっては8月から始まることもあります。
5.3 前年の所得が大きく変わった人は要注意!
前年の所得が増加すると、秋以降の年金の手取り額が想定外に減ってしまうことがあるため注意が必要です。
例えば、以下のように前年の課税所得が増えるケースがこれにあたります。
- 不動産の売却や退職金の受け取りで、一時的に大きな所得があった
- 年金以外にパート収入や不動産収入などがあった
- 配偶者控除などの各種控除の適用がなくなり、課税対象額が増えた
このような理由で前年の所得が増えた場合、年度後半の「本徴収額」が、前半の「仮徴収額」に比べて大幅に高くなることがあります。
その結果、秋以降に天引きされる金額が増え、年金の手取りが大幅に減ってしまう可能性もあるのです。ご自身の状況をあらかじめ確認しておくと安心です。
6. 年金、ねんきんネットやねんきん定期便で見込み額の把握を
今回は60歳から90歳以上のシニアが受け取っている年金の受給額について詳しく見てきました。受給額の多い少ないについては年齢による差というのはあまり見受けられませんでした。
しかし、厚生年金(※国民年金を含む)の受給額の分布においては多少の差が見受けられました。受給者総数の1605万4729人のうち、約21.1%の方は月額10万円未満の年金しか受け取れませんが、受給者のうち約22.1%の方は月額19万円以上の年金を受け取れています。
割合としては同じ2割の方ですが、片方は月額10万円未満、もう片方は月額19万円以上の年金額と受け取れる年金額に大きな差があります。会社員や公務員の方が受け取れる厚生年金は「年金保険料を納めた期間」や「現役時代の収入」によって年金額が個人間で異なります。
ご自身の年金の見込み額を確認したいときは、ねんきんネットやねんきん定期便などが有効です。自身が将来受け取れる年金見込額をしっかり確認しておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省「保険料(税)の特別徴収」
鶴田 綾