「お辞儀ハンコ」日本にはびこる謎のビジネスマナー

ビジネス、今日のひとネタ

社会人になると、仕事のやり方だけでなく、礼儀やマナーなど、学ぶことも多いですね。しかし、そうして覚える日本のビジネスマナーの中には必要性に疑問を感じる「謎マナー」も多く、たびたび話題となっています。

たとえばみなさんは「お辞儀ハンコ」というマナーをご存じですか? あるきっかけで、このマナーがネット上で大きな反響を呼んでいるのです。

ことの発端

「お辞儀ハンコ」とは、稟議書など社内で複数人の承認が必要な書類に押印する際、「部下が上司にお辞儀をしている」ように「左斜めに傾けて」ハンコを押すという、金融業界など一部で重んじられているビジネスマナーです。

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今回の発端となったのは、2月20日の午前4時半にTwitterに投下された次のようなツイートです。

「たった今、「請求書の判子がお辞儀していないのは失礼だ」っていうカンカンに怒った電話がかかってきて、請求書のリテイクっていうよくわからない状況に接しているんですけど、ここは本当に文明社会ですか? いま四時半ゾ???」

このツイートは1万7000RT(リツイート)されるほど反響を呼びました。また、文面にも書いてありますが、一般的にはどう考えても睡眠中の時間である「午前4時半」に電話をかけてくるほうがよほど迷惑であり、「謎マナー」をふりかざす人に限って気遣いが足りないという皮肉さを物語っているともいえるでしょう。

数多く寄せられた驚きと呆れの声

このツイートは話題を呼び、主に驚嘆と呆れの声が多く寄せられました。

「都市伝説かと思っていました」
「ほんまアホな習慣やな」
「部族の掟(社内ルール)を外部にもちだすなよ」

など、「マナーの存在は知られていたものの、本当にそのマナーを重んじる人が存在すること」が注目を浴びたようです。

また、このことに関連しては、

「先ず判子の存在を疑問視するところから始めんと」

といったように、日本のビジネス文化である「ハンコ文化」から見直そうよ、という意見も散見されました。

信じられない(という人もいる)マナー

お辞儀ハンコ以外にも、特に若い方からすると「本当にそんなマナーが存在するのか」と耳を疑いたくなるようなマナーも数多く存在します。

たとえば、「乾杯でグラスを合わせる際は、上司のグラスよりも下から合わせなければならない」というマナー。自分が上司よりも「上」であってはならないという意識から派生したマナーだと推測されますが、「そんな些末な一瞬の出来事を気にとがめる神経がわからん」という意見もあります。

また、「メールの『CC欄』のアドレスの並び順は役職順でなければならない」というマナー。これは先ほどの「ハンコの向き」の趣旨と似たようなものでしょう。手紙から派生したマナーかもしれませんが、宛先ではなく「確認のため」にアドレスを入れているCC欄でそこまでの配慮は必要なのでしょうか。

また、「出先で出された茶菓子やお茶には手を付けない」というマナーもあるようです。「取引先での飲食は卑しい」という意識からだと思われますが、「先方にせっかく用意してもらったお茶やお菓子を捨てることになり、もったいない」という批判もあります。

やっているけどちょっと疑問なマナー

上に挙げた例は、実践している人はそこまで多くないかもしれません。しかし、日常的に行っているマナーも、あらためて見ると合理的とはいえません。

たとえば、宴会での「お酌文化」。「グラスを空にさせてはいけない」というマナーですが、自分のペースで飲みたい人は少なくありません。また、特に女性は「上司や男性社員にお酌しろ」と言われたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

また、何かの会合に「軽装でお越しください」と招かれ、クールビズで赴くと、自分以外は上下スーツ姿の人しかいなかったという苦い経験をしたことはありませんか? 「人が集まる場でスーツ以外は失礼」という価値観があるのか、「服装自由」「軽装」「オフィスカジュアル」などの文言があってもスーツを着用する人は少なくありません。

最近のものでは「スマホでメモ代わりに写真を撮るのは失礼にあたるため、紙でメモを取る」というマナーもありますね。「自分の手で紙に書いたほうが頭に残る」というのは確かにありますが、写真のほうが合理的な場合もあるのに、「紙でメモを取る」という行為に執着しなくてもいいような気はします。

また、セキュリティの本質を理解せず、「鍵付き圧縮ファイルと解凍時のパスワードを別々のメールで送る」「USBメモリは危ないのでCDに焼いてデータを移す」といった風習を行っている会社も少なくありません。いずれの風習も、自分だけではなく相手も手間がかかる割には、セキュリティはそれほど上がらないといわれています。

誰のため、何のためのマナーなの?

高度経済成長時代から大きな変化がない、日本のビジネス社会。その影響からか、現在も「マナー」として重用されているものの中には「誰のための、どんな目的のマナーなのか」という視点が欠けたものも少なくありません。

そのため、「ビジネスマナーをアップデートする」という考えから、不必要なマナーを取り除いた「礼儀2.0」に取り組もうと実践している動きもあります。

もちろん合理性がすべてではありませんし、あえて時間や手間をかけることで、相手も心地よく仕事ができるようなこともあります。ただ、生産性や作業効率がこれまで以上に重視されているこの時代、意義が見いだせないようなマナーには、あまり固執しなくてもいいのかもしれません。みなさんはどう思われますか?

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2005年創業。ビジネス書・実用書を中心とした書籍出版や企業出版、メディア・コンテンツ事業、デザイン制作事業などを手がける。

主な刊行書籍に、20万部突破の『誰からも「気がきく」と言われる45の習慣』をはじめ、『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』 『起業家のように企業で働く』 『すべての仕事を紙1枚にまとめてしまう整理術』 『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』 『自分を変える習慣力』 『鬼速PDCA』など。