アナリストが気づいた3つのポイント
先日開催された「第4回鉄道技術展」を見学。見学者は前回より増加しており「ホットなテーマ」であるこが実感できました。
筆者は信号システムについて集中的に取材をしましたが、海外展開のカギはCBTC (Communication Based Train Control)にあるようです。
このテーマでは、日立製作所、三菱電機、日本信号、京三製作所などが注目できます。
盛り上がっていた「鉄道技術展」
11月11日~13日に鉄道関連機材やシステムの総合展「第4回鉄道技術展」が幕張メッセで開催されました。
3日間合計の受付登録者数は28,507名(1日平均で約9,500人、併設された橋梁・トンネル技術展を含む)と、東京モーターショー(10月29日~11月8日、東京ビックサイト)の812,5000(同約81,000人)に比べると、ニッチで超マイナーな展示会です。
ただし、前回(2013年)に比べると登録者数は約+50%増となっており、東京モーターショーの▲10%減とは対照的な結果となっています。
小ぶりな展示会ですが、外国人を含め多数の業界関係者であふれていました。
官民総力で注力しているインフラ輸出の中核分野であること、そして、国内市場もリニア中央新幹線などの新線への新規投資や東京オリンピック・訪日外国人の増加などにより更新投資が見込めることが、活況の背景だと考えられます。
無線技術による信号システム(CBTC)に注目
展示会には、保安装置(信号システム、踏切)、旅客案内表示装置、自動改札装置、鉄道車両などを手掛ける国内外400社以上の企業や団体が出展していました。今回、特に筆者が注目したのが、無線技術による信号システム(CBTC)です。
日本の鉄道信号システムは、線路の軌道上に車両の位置を把握する装置を等間隔に配置し、有線ケーブルを介して読み取る方式が主流です。
一方、海外では軌道回路を使わず無線通信で車両を制御する方式(CBTC:Communication Based Train Control)が主流となっています。CBTCで先行している企業は、タレス、アルストム、シーメンス、アンサルドSTS(日立製作所が買収予定)などの欧州勢です。
ここで、気になるのは、日本の鉄道信号メーカーの戦略です。
①日本でもCBTCは普及していくのか、②海外で日本で主流の有線ケーブル方式が受け入れられるのか、③日本の信号機メーカーも海外展開は可能なのかといった点について、各社の展示説明者に質問してみました。そこで得られた答えを以下にまとめました。
CBTCが日本で急速に普及する可能性は低い
日本でもJR東日本は、宮城県の仙石線で三菱電機と共同開発したATACS(Advanced Train Administration and Communication System)とよばれるCBTCを2011年から実用化し、2017年からは埼京線での導入を決めています。
また、常磐線の綾瀬~取手区間にCBTCを導入するため、タレスに設計を委託することを決定しています。ただし、これは全体で見れば極めて限定的です。今年開通した北陸新幹線も、CBTCは採用しませんでした。
既存システムは、安全性が実証済であり、あえてコストを大きくかけてCBTCへ移行するインセンティブは少ないので、今後、大きく変化する可能性は小さいというのが大方の意見でした。
海外で日本で主流の有線ケーブル方式が受け入れられる可能性は低い
先進国でも、新興市場でも、海外はCBTCというのが共通した答えでした。日本方式は、有線ケーブルの敷設やメンテナンスのコストがCBTCに比べると割高となるためです。
つまり、海外展開を行うためにはCBTCが不可欠ということです。この点で、日立製作所によるアンサルドSTS買収も理にかなったものと理解できます。
日本の信号機メーカーも海外展開は可能なのか
日本信号は、2011年の中国の北京地下鉄での採用を皮切りに2013年にはインドのデリー地下鉄、韓国の金浦都市鉄道でCBTCの実績を獲得済みで、今回も実機を展示していました。
日立製作所は出展はしていませんでしたが、シンガポールのモノレールの都市交通向けのCBTCを受注した実績があります。また、アンサルドSTSの買収により海外展開が加速することが期待できます。
三菱電機(6503)は、具体的な海外案件については公表していませんが、CBTCの強化を経営戦略の中で表明しているので今後に期待が持てます。
京三製作所は、三菱重工と海外展開で協業しており、CBTCも開発済みであるため今後の動向を注視したいと思います。
和泉 美治