4. 厚生年金、保険料の上限引き上げで影響を受けるのは誰?
2025年6月13日、国会で「年金制度改正法」が成立しました。
今回の改正には、現役世代の生活や将来の年金額に直結する重要な見直しが含まれています。その一つが、保険料や年金額の計算に使われる「賃金の上限(標準報酬月額の上限)」の引き上げです。
厚生年金や健康保険の保険料、そして将来の年金額は、「標準報酬月額」という基準に基づいて算定されます。
標準報酬月額は、毎月の給与と賞与を区切りのある等級に当てはめて決定され、保険料や年金額の基礎となります。
2025年10月時点では、標準報酬月額の上限は月65万円です。例えば月収が70万円や80万円であっても、保険料や年金額の計算には65万円が上限として適用されるため、それ以上の収入は反映されません。
このため、高収入の人ほど「保険料も年金額も頭打ち」となっているのが現状です。
厚生労働省の試算によると、現在の会社員男性のおよそ10%が標準報酬月額の上限に該当しています。つまり、比較的高収入の層が今回の改正の対象です。
これまでは、収入が65万円を超えても保険料負担は抑えられていましたが、同時に将来受け取る年金額も実際の収入水準に比べると低めに抑えられていました。
改正後はこの「頭打ち」が解消され、より収入に応じた負担と給付につながります。
上限引き上げのスケジュール
- 2027年9月~:月68万円
- 2028年9月~:月71万円
- 2029年9月~:月75万円
最終的には、現在の65万円から月75万円まで上限が拡大されます。
今回の改正により、高収入層にとっては保険料負担が増える一方で、将来の年金額もこれまで以上に収入実態に近い形で反映されるようになります。
結果的に「現役時代の収入と老後の年金額のバランス」が改善されるため、長期的には高収入層の老後保障が充実する可能性があるでしょう。
