「リタイア後の暮らし」について仕事の継続や年金の受給など悩まれる方も多いでしょう。

60歳以上の方が厚生年金保険に加入しながら年金を受け取る場合には、総報酬月額相当額と基本月額の合計で51万円を超えると、厚生年金の月額で51万円を超える部分の2分の1が支給停止となります。

いわゆる在職老齢年金ですが、この支給停止調整額が2026年度から62万円へと変わるため、仕事を続けようと考えている方はその働き方について考え直す方もいるでしょう。

一般的な年金受給開始年齢は65歳からですが、65歳以降でリタイアした方はどのような暮らしをされているのでしょうか。65歳以上のお金事情をみていきます。

1. 【在職老齢年金】支給停止調整額が2026年度から62万円へ

年金制度改正法で決まった「在職老齢年金制度」の見直しについて確認しましょう。

1.1 在職老齢年金とは

60歳以降で老齢厚生年金を受給しながら働いている場合、年金額と報酬(給与・賞与)の合計が基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止になるのが「在職老齢年金」制度です。

1.2 在職老齢年金の支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)

支給停止調整額の推移については以下のようになっており、今回の改正(2026年4月から適用)は62万円へとなりました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:62万円

これにより働き控えをしていた方も働きやすくなるでしょう。60歳以降、どんな生活をするか、いつまで働き続けるかなどを考えてみましょう。

2. 65歳以上リタイア世帯「月の生活費」とは

では65歳以上のお金事情について、まずは総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」から、65歳以上の単身無職世帯のひと月の家計収支データを見ていきます。

2.1 65歳以上《単身》無職世帯ひと月の家計収支

毎月の実収入:13万4116円

■うち社会保障給付(主に年金):12万1629円

毎月の支出:16万1933円

■うち消費支出:14万9286円

  • 食料:4万2085円
  • 住居:1万2693円
  • 光熱・水道:1万4490円
  • 家具・家事用品:6596円
  • 被服及び履物:3385円
  • 保健医療:8640円
  • 交通・通信:1万4935円
  • 教育:15円
  • 教養娯楽:1万5492円
  • その他の消費支出:3万956円
    • うち諸雑費:1万3409円
    • うち交際費:1万6460円
    • うち仕送り金:1059円

■うち非消費支出:1万2647円

  • 直接税:6585円
  • 社会保険料:6001円

65歳以上《単身》無職世帯の家計

  • ひと月の赤字:2万7817円
  • エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合):28.2%
  • 平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合):122.9%

老齢年金を受給して一人暮らしをするシニア世帯の家計は、どのような状況なのでしょうか。

この単身世帯のひと月の支出合計は16万1933円です。その内訳は、税金や社会保険料などの「非消費支出」が1万2647円、食費や住居費などの「消費支出」が14万9286円を占めます。

一方、ひと月の収入は13万4116円で、その約9割(12万1629円)は主に公的年金です。

エンゲル係数は28.2%、平均消費性向は122.9%。結果的に、この単身世帯は毎月2万7817円の赤字を抱えています。

ただし、この家計収支データには注意すべき点があります。まず、支出に「介護費用」が含まれておらず、住居費も1万円台と低めです。健康状態や住居環境によっては、これらの費用がさらに上乗せされることも考慮する必要があるでしょう。

また、「非消費支出」が示す通り、老後の年金暮らしが始まっても、税金や社会保険料の支払いは生涯続きます。

多くのシニアがこれらの費用を年金から天引きで納めている現実も踏まえ、年金収入と日常生活費だけではなく、こうした、固定費も考慮した生活設計が大切となるでしょう。