春の足音が聞こえ始める3月、新年度に向けて生活設計を見直す方も多いのではないでしょうか。

公的年金だけでは少し心もとないと感じる方にとって、心強い制度が「年金生活者支援給付金」です。

これは、年金の収入が一定基準以下の方を対象に、年金に上乗せして支給される給付金制度です。

本記事では、どのような方が対象になるのか、具体的にいくら受け取れるのか、そして忘れずに行いたい手続きの方法まで、分かりやすく解説していきます。

ご自身が対象になるかを確認し、ゆとりあるセカンドライフへの一歩としてお役立てください。

年金生活者支援給付金の概要

年金生活者支援給付金とは、公的年金の受給額が一定の基準を下回る方々の生活を支えるため、年金に加えて支給される給付金のことです。この制度には、以下の3つの種類が設けられています。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

これらはそれぞれ「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」を受給している方の中で、公的年金などを含めた所得が一定基準以下の場合に、2カ月に一度受け取ることが可能です。

年金生活者支援給付金の対象となる方

年金生活者支援給付金は3種類あり、それぞれに所得などの支給要件が定められています。

ここでは「老齢年金生活者支援給付金」と、「障害年金生活者支援給付金および遺族年金生活者支援給付金」の2つに分けて、詳しい要件を確認していきましょう。

老齢年金生活者支援給付金の支給要件について

「老齢年金生活者支援給付金」支給要件2/6

「老齢年金生活者支援給付金」支給要件

出典:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

  • 65歳以上で、老齢基礎年金を受給していること
  • 同じ世帯に住む全員の市町村民税が非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入金額(※1)と、その他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下であること(※2)

※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は、この計算に含みません。
※2 昭和31年4月2日以降生まれの方で合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の場合、また昭和31年4月1日以前生まれの方で80万6700円を超え90万6700円以下の場合には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給の対象となります。

障害・遺族年金生活者支援給付金の対象者

  • 障害基礎年金または遺族基礎年金のいずれかを受給していること
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数に応じて増額されます)

※ 所得の計算には、障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれません。

なお、いずれの給付金においても、定められた要件をすべて満たす必要があります。

年金生活者支援給付金で受け取れる金額は?

年金生活者支援給付金は、「老齢」「障害」「遺族」の3種類に分かれており、公的年金に上乗せされる形で支給されます。

ここでは、具体的にいくら受け取れるのか、その金額について見ていきましょう。

年金生活者支援給付金の支給金額3/6

年金生活者支援給付金の支給金額

出典:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」

2025年度における年金生活者支援給付金の支給額

2025年度の年金生活者支援給付金の額は、2024年度から2.7%の引き上げとなりました。

  • 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5450円
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級6813円・2級5450円
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5450円

参考:2024年度の年金生活者支援給付金支給額

  • 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5310円
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級6638円・2級5310円
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5310円

ただし、老齢年金生活者支援給付金は、全員が一律で5450円を受け取れるわけではありません。この基準額を基に、保険料を納付した期間などに応じて実際の給付額が算出されます。

上記の金額はいずれも月額であり、支給日には2カ月分がまとめて公的年金の受取口座へ支給されます。もし上記の金額を満額受給できる場合、1回の支給で約1万円、年間では約6万円を受け取れる計算になります。

なお、「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金で4146円、障害年金生活者支援給付金で5727円、遺族年金生活者支援給付金で5228円という実績です。

※2025年3月時点で認定されている方の平均給付月額です。

年金生活者支援給付金の請求手続き

「年金生活者支援給付金」は、対象になれば自動的に受け取れるわけではありません。申請が必須となりますので、手続きを忘れないように注意が必要です。

ここでは、多くの方が該当するであろう2つのケースに分けて、請求手続きの方法を解説します。

ケース1:すでに年金を受給中で、新たに給付金の対象となった方

支給対象となった場合4/6

支給対象となった場合

出典:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

  1. 毎年9月の初旬から、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が対象者に順次郵送されます。この請求書を受け取ったら、必要事項を記入し、切手を貼って投函してください。
  2. 締切日までに提出すれば10月分から遡って受け取れますが、提出が遅れると請求した月の翌月分からの支給となってしまいます。なるべく早めに手続きを済ませましょう。

※「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は、マイナポータルを利用した電子申請も可能です。電子申請を利用した場合、はがきを郵送する必要はありません。

ケース2:これから老齢年金の受給が始まる方

  1. 年金の受給権が発生する3カ月前に、年金を受け取るための「年金請求書(事前送付用)」が日本年金機構から送られてきます。この中に「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。
  2. 必要事項を記入した上で、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書とあわせて年金事務所へ提出します。

翌年以降の手続きは原則として不要です

一度請求書を提出して受給が決定すれば、支給要件を満たし続ける限り、翌年以降に改めて手続きをする必要は原則ありません。

※年金生活者支援給付金は、毎年、前年の所得情報などに基づいて継続して支給できるかの判定が行われます。その判定結果は、毎年10月分(12月支払い)から1年間適用されます。

国民生活基礎調査から見る、公的年金に依存するシニア世帯の実態

年金収入のみで生活している高齢者世帯は、実はそれほど多くないのが現状です。

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯のうち、収入のすべてが公的年金・恩給である世帯は43.4%でした。

高齢者世帯の総所得に占める「公出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況的年金・恩給」の割合別世帯構成6/6

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成

出典:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給が総所得の80~100%未満を占める世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給が総所得の60~80%未満を占める世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給が総所得の40~60%未満を占める世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給が総所得の20~40%未満を占める世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給が総所得の20%未満を占める世帯:4.0%

このデータから、残りの56.6%の高齢者世帯は、公的年金や恩給以外の所得源を持って生活費をまかなっていることが分かります。

公的年金だけで生活するのが難しい可能性も考慮に入れて、早めに老後の生活設計を立てておくことが大切といえるでしょう。

まとめ

今回は、年金生活者支援給付金について、対象となる方の条件や給付額、申請手続きの流れを詳しく見てきました。

この給付金は、自動的に支給されるものではなく、ご自身での請求手続きが必要です。

日本年金機構から案内が届いた際は、内容をよく確認し、忘れずに手続きを進めることが大切です。

物価の上昇が続くなか、少しでも家計の助けになる制度は積極的に活用したいものです。

ご自身の状況と照らし合わせ、対象になるかどうかを一度確認してみてはいかがでしょうか。この情報が、皆さまの穏やかな暮らしの一助となれば幸いです。

参考資料