7月21日には全国初の酷暑日となった地域もあるなど、暑さの厳しい季節。エアコンや冷蔵庫の電気代が家計にのしかかる時期は、老後の家計を意識するきっかけにもなりやすいものです。

「今の生活費も守りたい」「でも年金だけで賄えるか不安だから、老後に向けた備えも始めたい」と考えたとき、モデル世帯・共働き・シングルなど自分の世帯像に近い目安が知りたい方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省が示す2026年度のモデル世帯(夫婦2人分)の年金額は月23万7279円ですが、共働きやシングルではひとり分の受給水準もまったく違います。

今回は「厚生年金月23万円」を目安に、世帯パターンごとの実態を最新データから解説します。

太田 彩子

共働き世帯は世帯合算で年金額を大きくしやすい一方、シングル世帯は自分ひとりの受給額で固定費を賄う必要があります。私が自治体の保険料窓口で老後のご相談を受けていた頃も、世帯像によって不安の質が違うと実感してきました。

今回の記事では、月23万円ラインを目安に世帯別の年金額を確認したうえで、わが家に置き換えたときに見えてくる備え方と、より詳しく相談できる窓口までお伝えします。

1. この記事のポイント3つ

  •  世帯によってもらえる年金額はバラバラ!共働きやシングルなどごとに受給の目安がわかる
  •  月23万円はあくまで「額面」!実際の手取りは2〜3万円ほど少なくなるので要注意
  •  漠然とした老後の不安をスッキリ解消!「ねんきん定期便」や相談窓口を活用して、備え始めよう

2. 厚生年金「月23万円」世帯パターン別に見るリアル

厚生年金は「加入月数」と「納めた保険料」で受給額が決まるため、共働きかシングルか、夫婦の働き方によって世帯全体の受給額が大きく変わります。

ここではモデル世帯・共働き・シングルの3パターンで「月23万円」に届くかどうかを試算していきましょう。

参考データは、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」です。

厚生年金:年金月額階級別の受給権者数1/2

厚生年金:年金月額階級別の受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

2.1 パターン1:モデル世帯(夫会社員・妻専業主婦)

厚生労働省が示すモデル世帯に倣い、夫は厚生年金の平均月額に近い16万9967円(男性平均)、妻は老齢基礎年金の満額7万608円(2026年度)と仮定すると、夫婦合算で月24万575円となります。

年金月23万円ラインを実現するには、夫側の平均年収がおおむね700万円台後半で、40年勤続する必要があります。

厚生年金の受給権者のうち、月20万円超に該当するのは約303万人で、全体の約18.8%にとどまります。モデル世帯として月23万円を受け取るのは、必ずしも一般的とはいえない水準です。

2.2 パターン2:共働き夫婦(両方が厚生年金)

共働き世帯では、夫婦それぞれが厚生年金を受け取ります。仮に夫が男性平均の16万9967円、妻が女性平均の11万1413円を受給すると、世帯合算で月28万1380円。モデル世帯を4万円ほど上回る水準になります。

世帯合算で「厚生年金月23万円」を大きく超えるケースが一般的です。共働きは、厚生年金加入期間の合計を伸ばしやすく、老後の受給額を安定させやすい働き方だといえます。

2.3 パターン3:シングル(単身・厚生年金加入者)

シングルで会社員として長く勤めてきた場合、公的年金は自分ひとり分の受給額となります。

40年加入・平均年収600万円台後半の会社員でも、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計で月20万円前後に収まるケースが多く、月23万円ラインは平均を上回る水準です。

単身世帯は住居費や光熱費の基礎的な固定費を一人で負担するため、年金の額そのものだけでなく、税・社会保険料の負担後の手取りベースで生活費を組み立てておく必要があります。

太田 彩子
私自身、結婚や出産でキャリアを一度離れる選択をしてきたので、共働きを続けたくても難しくなるご家庭があるのは実感してきました。
年金への影響を知ったうえで選ぶのと、そこまで考えずに選ぶのとでは、後で振り返ったときの納得感が違うようにも感じます。今、働き方に迷いのある方こそ、一度ご自身の見込み額を「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確かめておかれると、選択肢を落ち着いて比べやすくなります。

3. 【手取り】厚生年金月23万円は、実際どのくらい残るのか

モデル年金と示される年金月23万円は、あくまで額面(総支給額)です。

ここから所得税・住民税・介護保険料・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)が差し引かれるため、手元に残る手取りは額面より2〜3万円ほど少なくなるのが一般的です。

3.1 年金から差し引かれる主なもの

  • 所得税・復興特別所得税
  • 住民税
  • 森林環境税
  • 介護保険料(65歳以上、原則として年金からの特別徴収)
  • 国民健康保険料(65〜74歳)または後期高齢者医療保険料(75歳以上)

これらの負担額は、自治体や扶養状況、加入する医療保険の種類によって変わります。

とくに国民健康保険料と後期高齢者医療保険料は地域ごとに料率が異なるため、同じ年金月額でも手取りには自治体差が生まれます。

3.2 単身・65歳・年金月23万円の手取り試算例

ここでは、単身・65歳・扶養親族なしという前提で、年金月23万円(年間276万円)の手取りを概算してみます。

  • 公的年金等控除(65歳以上):110万円
  • 公的年金所得:276万円 − 110万円 = 166万円
  • 社会保険料(介護保険料+国民健康保険料の合計):年間およそ24万円(月およそ2万円)
  • 所得税・復興特別所得税:年間およそ4万9000円(月およそ4000円)
  • 住民税:年間およそ10万円(月およそ8000円)
  • 森林環境税:年1000円

額面月23万円から差し引かれる合計は月およそ3万2000円で、手取りは月19万8000円ほどに落ち着く計算です。年間にすると額面276万円に対し、手取りは約238万円という水準になります。

太田 彩子
あくまで一例で、扶養親族の有無や自治体の保険料率、75歳以降の後期高齢者医療制度への移行などで実際の手取りは前後します。私が自治体の窓口で保険料の賦課を担当していた頃も、同じ年金月額でも保険料の負担額に驚かれる方が少なくありませんでした。ご自身の見込み額は、お住まいの市区町村の国民健康保険課や、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認しておかれると安心です。

4. 年金の相談窓口はどこ?

年金の見込み額や受給の手続き、繰下げ・繰上げの損得など、公的年金には自分だけでは判断しづらいポイントが数多くあります。

制度が複雑なうえに、家庭ごとの働き方や加入歴によって結論が変わるため、迷うことも多いですよね。疑問があるときは、早めに専門の相談窓口に頼るのが安心です。ここでは主な相談先を4つ紹介します。

4.1 ねんきんダイヤル

1つ目は「ねんきんダイヤル」です。日本年金機構が運営する電話相談窓口で、一般的な制度の質問や、ねんきん定期便・ねんきんネットの見方などを気軽に相談できます。

電話番号は0570-05-1165(050から始まる電話の場合は03-6700-1165)で、月曜は午後7時まで対応しています。まずは電話で状況を整理したいときに便利です。

4.2 年金事務所

2つ目は「年金事務所」です。

全国の各地域に設置されている日本年金機構の窓口で、加入記録の確認、受給手続き、任意加入、遺族年金や障害年金の請求など、具体的な手続きが必要な相談はここで対応してもらえます。

混雑を避けるため、事前予約を活用するとスムーズです。

4.3 街角の年金相談センター

3つ目は「街角の年金相談センター」です。

全国社会保険労務士会連合会が運営し、日本年金機構から業務委託を受けている窓口で、社会保険労務士が対面で相談に応じてくれます。

年金事務所と同様に加入記録の確認や請求手続きが可能で、繁華街や駅近くに設置されている拠点も多いため、平日に足を運びやすい方に向いています。

4.4 市区町村の年金担当窓口

4つ目は「市区町村の年金担当窓口」です。国民年金の加入・脱退・保険料免除の申請など、自治体経由の手続きはこちらで対応します。

国民健康保険や後期高齢者医療との窓口が近いため、退職前後の切り替え手続きをまとめて相談したい場合にも便利です。

相談時には、ねんきん定期便、基礎年金番号がわかる書類(年金手帳・青色の年金証書など)、本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証)を持参すると、加入記録や見込額の確認がスムーズに進みます。

夫婦2人分をまとめて相談したい場合は、委任状の要否も事前に確認しておくと安心です。「なんとなく不安」を数字に置き換える第一歩として、まずは自分に合う窓口に連絡してみてください。

5. 【筆者からのアドバイス】世帯パターンごとの備え方3つの視点

年金生活に向けて、どのように備えていけばいいのでしょうか。最後に世帯パターンごとの視点を解説します。

5.1 「モデル世帯」に囚われすぎない

公的年金の広報で使われるモデル世帯の23万7279円は、あくまで参考値です。

共働き・シングル・自営業などライフスタイルの多様化で、自分の世帯像に当てはまらないケースがほとんどです。まずは「わが家の世帯像」で試算し直しましょう。

5.2 共働きなら「厚生年金加入期間」を最大化する

共働き世帯は、夫婦ともに厚生年金の加入月数と標準報酬を積み上げるほど老後の合算受給額が伸びます。

パート勤務でも社会保険適用要件を満たすなら、厚生年金加入を選ぶ余地を検討しておきましょう。

5.3 シングルは自助努力を早めに始める

単身世帯は家族の年金を合算できない分、公的年金の不足を自分ひとりで補う必要があります。

iDeCoやNISAなどでコツコツ積み立てを続けておくと、老後の選択肢が広がります。

6. まとめにかえて

厚生年金月23万円は、モデル世帯で単独受給として届くケースは少なめですが、共働き世帯では合算で十分に超える水準です。

シングルでは平均をやや上回るラインとして意識しておきたい金額といえます。

自分の世帯パターンで見込み額を「ねんきん定期便」やねんきんネットで確認し、不足分を早めに補う準備を進めていきましょう。

参考資料

太田 彩子