厚生年金や国民年金は、2カ月に一度支給されます。そして10月は、その支給額に変化がある人がいる時期です。

なぜなら、年金からは税金や社会保険料が天引きされていますが、その金額が見直されるタイミングが10月に多いためです。

天引き額が変わると、手取り額も変わります。この時期に「年金振込通知書」が届いたら、必ず内容を確認しましょう。

本記事では、10月支給分から手取り額が変わる可能性がある人の特徴を解説します。さらに、60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上のシニア世代の平均年金月額も一覧でご紹介します。

1. 10月の年金から「厚生年金や国民年金」の手取り額が変わるのはどんな人?

公的年金からは、税金や社会保険料(健康保険料・介護保険料など)が天引き(特別徴収)されます。

「天引き額は一年間ずっと同じ」と思いがちですが、実は年度の途中で金額が変わるのが一般的です。

その理由は、年金から天引きされる住民税と社会保険料の計算が、二段階(仮徴収・本徴収)のしくみになっているためです。

年金の仮徴収と本徴収

年金の仮徴収と本徴収

出所:厚生労働省「保険料(税)の特別徴収」

1.1 仮徴収

年金から天引きされる住民税や国民健康保険料などの社会保険料は、前年の所得をもとに計算されます。しかし、その正式な年額が確定するのは毎年6月~7月頃です。

金額が確定していない年度前半(4月・6月・8月支給分の年金)では、まず前年度2月と同額が暫定的に天引きされます。これを「仮徴収」と呼びます。

1.2 本徴収

前年の所得が確定し、その年度に支払うべき社会保険料の正式な年額が決まると、徴収方法が切り替わります。

まず、確定した年額から、仮徴収として支払った合計額を差し引きます。そして、残った金額を年度後半の支給回数で割って天引きします。これが「本徴収」です。

多くの場合、本徴収は10月支給分からですが、自治体によっては8月から始まることもあります。

前年の所得が増加すると、秋以降の年金の手取り額が想定外に減ってしまうことがあるため注意が必要です。

例えば、以下のように前年の課税所得が増えるケースがこれにあたります。

  • 不動産の売却や退職金の受け取りで、一時的に大きな所得があった
  • 年金以外にパート収入や不動産収入などがあった
  • 配偶者控除などの各種控除の適用がなくなり、課税対象額が増えた

このような理由で前年の所得が増えた場合、年度後半の「本徴収額」が、前半の「仮徴収額」に比べて大幅に高くなることがあります。

その結果、秋以降に天引きされる金額が増え、年金の手取りが大幅に減ってしまう可能性もあるのです。ご自身の状況をあらかじめ確認しておくと安心です。

1.3 仮徴収が発生する背景(社会保険料を例に解説)

年金受給者の基本的な社会保険料の計算プロセスは、以下のような流れとなります。

社会保険料の徴収額の計算スケジュール

社会保険料の徴収額の計算スケジュール

出所:厚生労働省「保険料(税)の特別徴収」

社会保険料の計算・徴収額の確定においては、自治体と年金関連機関の連携が必要です。上記のようにまず全国レベルで対象者を抽出して、国保中央会・国保連合会で対象者を振り分けます。

自治体側で特別徴収の対象者を反映したのち、再び国保中央会・国保連合会でデータを統合して、全国レベルの保険料徴収額を確定させる流れです。

以上の一連のプロセスが完了するのがおおよそ7月末のため、社会保険料が確定したのちの「本徴収」は8月分の年金が支給される10月支給分(一部自治体は8月分)となるのです。