4. 「先輩よりも給与の高い新人」の登場でキャリアはどう変わる?
初任給の引き上げは、企業に新たな課題を生んでいます。新卒職員の給与が先輩社員の給与を上回る「給与の逆転現象」です。これまで日本は年功序列の賃金体系となっていたため、混乱する企業も多いのではないでしょうか。
こうした変化は、私たちのキャリアに大きな影響を与えます。たとえば、賃金体系は、年齢や勤続年数ではなく、スキルや会社への貢献度が給与に反映されるようになる可能性があります。
また、リスキリングのように社会人になっても学び続けて専門性を磨き、常に自身の市場価値を高めていくことも求められていくでしょう。もし待遇改善が見込めなければ、よりよい条件を提示してくれる会社に転職する、といった選択肢も、今後はさらに一般的になっていくと考えられます。
一方、企業側は、こうした給与格差の是正に取り組むことが求められます。帝国データバンクの「初任給に関する企業の動向アンケート(2025年度)」によれば「前年度に新卒職員の給与を引き上げたため、今年度は既存社員の賃上げをする予定だ」と回答する企業もありました。新卒職員を確保しつつ既存社員の流出を防ぐために、社内全体の賃金の見直しが求められているのです。
5. まとめ
年収1000万円超の会社員は5.5%と、多くはありません。反対に初任給は引き上げが続いており、今後もこの傾向が続けば、高年収の人の割合が増える可能性があります。
ただし、人材不足や物価高も同様に進んでいくと考えられます。賃上げにこだわらない国の柔軟な施策が求められるでしょう。
参考資料
- 国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
- 日本労働組合総連合会「昨年を上回る賃上げ!~2025 春季生活闘争 第 7 回(最終)回答集計結果について~」
- 帝国データバンク「初任給に関する企業の動向アンケート(2025年度)」
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)7月」
石上 ユウキ