4. 自己負担額の具体的計算例

具体的な計算例を用いて、公的制度を利用したときの自己負担のイメージをしてみましょう。

4.1 高額療養費制度を利用した場合

年収700万円の方が月額100万円の医療費がかかる治療を受けた場合を例に計算してみます。

まず高額療養費制度の上限額は:
8万100円+(100万円−26万7000円)×1%=8万7430円

3割負担では30万円の支払いが必要ですが、実際の負担は8万7430円となり、差額の21万2570円が還付されます。

4.2 年間治療を継続した場合の負担

同じ条件で1年間治療を継続した場合、多数該当制度により4回目から月額負担が4万4400円に軽減されます。

年間負担総額:8万7430円×3カ月+4万4400円×9カ月=約66万円

これに差額ベッド代や食費などの実費負担が加算されることになります。

5. 治療費支払いが困難な場合の対処法

公的制度のおかげで自己負担額は軽減できても、毎月治療が続くと医療費負担が重くのしかかることもあります。がんの種類や進行状態によっては、治療が長引くことも考えられます。

がんの治療費の支払いが難しくなってしまった場合はどうすればよいのでしょうか?詳しく解説していきます。

5.1 限度額適用認定証の活用

事前に健康保険組合等から「限度額適用認定証」を取得することで、医療機関での支払いを高額療養費制度の上限額内に抑えることができます。これにより一時的な多額の支払いを避けられます。

治療予定が決まっている場合は、可能な限り事前に手続きを行うことをおすすめします。

5.2 がん相談支援センターの活用

経済的な困窮により治療継続が困難な場合は、全国のがん診療連携拠点病院等に設置されている「がん相談支援センター」に相談できます。匿名かつ無料で、治療費に関する相談や各種制度の案内を受けることができます。