2. 主要ながん種別の治療費と入院期間
では、実際にがんに罹患するとどれくらいの費用がかかるのでしょうか。がんの発症部位別に、治療費の平均と入院日数を見ていきましょう。
2.1 白血病の医療費実態
令和4年度の統計によると、白血病の年間入院件数は約9万件で、1入院あたりの平均在院日数は約18日となっています。1入院あたりの平均費用は約183万円と高額ですが、これは抗がん剤などの化学療法が治療の中心となるためです。
白血病は他のがんと比較して発症率は低いものの、治療期間が長期化しやすく、経済的負担が大きくなる病気の一つです。
2.2 胃がんの医療費実態
日本人に多い胃がんは、年間入院件数が約25万件、1入院あたりの平均日数は約11日と比較的短期間です。入院費用の平均は約69万円ですが、外来治療も年間約250万件と非常に多く、1回あたり約4万9000円の費用がかかります。
胃がんは手術後の外来治療が重要な役割を果たすため、退院後の継続的な治療費用も十分に考慮する必要があります。
2.3 子宮頸がんを含む子宮がんの実態
子宮がんは年間入院件数が約10万件に対し、外来治療件数が約96万件と通院治療中心の病気です。入院費用は1回あたり約68万円、外来治療は1回約3万7000円となっています。
早期発見の場合はレーザー治療による日帰り手術も可能ですが、進行すると予後に大きく影響するため、定期検診による早期発見が経済的負担軽減の観点からも重要です。
2.4 上皮内がんの医療費実態
上皮内がんとは、がんが上皮の内部にとどまっている比較的早期発見のがんです。特に女性の場合、子宮頸がんは上皮内がんで見つかることが多いとされています。
上皮内がんの年間入院件数は約51万件であるのに対し、外来治療の件数は年間約1260万件と、大幅に外来治療の件数が多い特徴があります。
治療費は、入院1件あたり約59万円、外来治療の場合は1件あたり約2万円程度と大きな差があります。このデータには上皮内がん以外にも、ポリープなどの良性腫瘍も含まれています。
外来でポリープの処置をする程度であれば医療費を抑えることができますが、上皮内癌で入院・手術治療を行うとそれなりの医療費負担になることが考えられるため注意が必要です。
2.5 大腸がんの医療費実態
大腸がんは、現在日本で最も罹患者数が多いがんとして知られています。入院件数は年間約48万件、外来治療は年間約412万件と、外来治療も非常に多いのが特徴です
入院にかかる費用は1件あたり約72万円、外来治療は1件当たり約5万円となっています。外来治療の多さをふまえると、退院後の通院治療にかかる費用も考慮しておくと良いでしょう。
3. がん治療で活用できる公的制度
がん治療には高額な医療費がかかりますが、実際に負担する額は公的制度を利用することで軽減できます。ここからは、がん治療時に利用できる公的保障について解説していきます。
3.1 高額療養費制度による負担軽減
高額療養費制度は、月額の医療費自己負担に上限が設けられており、上限を超えて負担した額はあとから返還される制度です。70歳未満の場合は年収に応じて自己負担額が5段階に分けられています。
例えば年収約370〜770万円の方の場合、月額負担上限は「8万100円+(医療費−26万7000円)×1%」となります。そのため、がん治療で高額な医療費がかかったとしても、1カ月の負担額は約9万円前後となります。
また、年間3回以上高額療養費制度を利用すると、4回目から「多数回該当」により上限額がさらに軽減される仕組みもあります。
3.2 傷病手当金制度の活用
会社員や公務員が利用できる傷病手当金は、がん治療により就業不能となった場合に、標準報酬月額の約3分の2を通算1年6カ月受給できる制度です。
ただし、自営業者やフリーランスは対象外となるため、民間の保険で収入減少に備えておくことがより重要になります。