皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
週刊エコノミストの2019年2月12日号に記事を寄稿させていただきました。ご興味があれば、ご覧いただけると幸いです。
さて、今週の記事のポイントは以下の通りです。
- 1月の大きなイベントであった米連邦公開市場委員会(以下、FOMC)、及び米中閣僚級協議は、市場に大きな悪影響を与えなかった。
- 個別銘柄に目を転じた場合、業績(売上や利益など)が予想比下方修正された場合において、一部の銘柄では悪材料出尽くしと評価され株価が上昇するケースがみられた一方、素直に下落した銘柄もある。これは、世界景気(特に中国)の先行きについて、市場コンセンサスが形成できていないことを示すと思われる。
- 弊社の経済指標サプライズ・インデックスをみた場合、2018年の後半から始まった下落トレンドに反転の兆しがある。また、これを地域別にみた場合、米中の貿易問題による悪影響が懸念される中国が反転していることにも注目したい。
米国の金融政策を決定するFOMC、及び米中閣僚級協議という1月の大きなイベントが終わりました。皆さまがよくご承知のように、FOMCでは、金融政策がハト派(景気への配慮を重視し、金融緩和に前向きなスタンス)的に運営される可能性が意識されました。
また、米中貿易問題に関しては、もちろん予断は許されないものの、中国に対する追加関税措置が3月に実施される可能性は小さくなっているとの見方も浮上しています。これは、トランプ大統領と電話会談した台湾のハイテク企業トップが、トランプ大統領から米中貿易協議について「話し合いは順調で、近く合意に達するだろう」との見通しを伝えられたという報道があったことなどに起因しています。
利上げが続いていた米金融政策や米中貿易問題は、これまで相場の大きな重しになっていましたが、これが株価をサポートする材料になる可能性が出てきています。
経済指標を考えても、2月になって発表された米雇用統計やISM製造業景況感指数(いずれも1月分)は予想比強い数字であったと評価することができると考えます。
私はこれまで、2019年に景気が後退局面に陥る可能性は低いと考えていることをご説明してきましたが、これらのデータを受けて、世界経済が減速を続ける状況が変化する可能性を、市場は意識し始める可能性があると考えています。
個別銘柄に目を転じた場合、業績が予想比下方修正になった場合において、一部の銘柄では悪材料出尽くしと評価され株価が上昇するケースがみられた一方、素直に下落した銘柄もあります。これは、世界景気の先行きについて、明確な市場コンセンサスが形成できていないこと、特に中国の先行きに関して米中貿易問題がある中で、見方が分かれていることを示すと思われます(どちらかといえば、コンセンサスは回復時期が先、あるいは一層悪くなるという見方であると私は考えています)。
図表1は、これまで何度かご紹介してきた弊社の経済指標サプライズ・インデックスの推移です。
ご覧のように、昨年の後半から、下落基調(予想比、結果が悪い経済指標の数が増えたことを示します)を続けていましたが、足元では反転の兆しがあります。
そして、この指数は、国別にも計算しているのですが、興味深いことに、中国のサプライズ・インデックスが反転してきています(図表2)。実は経済協力開発機構(OECD)の発表する景気先行指数でも、中国の指数に底打ちの兆しがあります。米中貿易問題の悪影響が懸念されますが、一方で、データの一部では景気底打ちの可能性を示唆しているものがあることにも留意したいと考えます。
(2019年2月5日 9:30頃執筆)
柏原 延行