霜月の和名が示す通り、朝晩の冷え込みが厳しくなり、冬の訪れを肌で感じる11月となりました。 同時に、年末に向けて家計を見直す「冬支度」を始める時期でもあります。

特に、長引く物価高騰の影響を強く受ける中で、老後生活の柱となる「年金」への関心は一層高まっています。物価変動率や名目手取り賃金変動率と比較すると、増額されつつも実質的には目減りしているという現実も見過ごせません。 年金は増額しても、生活コストの上昇に追いついていない状況は、多くのシニア層にとって不安の種です。

本記事では、この2025年度の年金改定の詳細に始まり、国民年金と厚生年金の平均受給額、さらに65歳以上の夫婦世帯の平均的な家計収支、貯蓄の現状に至るまでを深掘りしています。

平均年金月額が国民年金で5万円台、厚生年金で14万円台という数字は、単身者や共働きでない世帯にとって、生活設計の厳しさを浮き彫りにしています。

また、年金受給開始時期を60歳から75歳の間で選べる「繰上げ・繰下げ受給」制度や、社会保険の適用拡大など、2025年に成立した年金制度改正の重要なポイントについても解説しています。 現在の年金制度を正しく理解し、ご自身の老後資金計画を見直すきっかけにしてください。

1. 2025年度の年金額は+1.9%

2025年度の公的年金額は、3年連続引き上げられました。2025年度は前年度より1.9%の増額となっています。

1.1 2025年度の年金額の例

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):6万9308円(1人分※1
  • 厚生年金:23万2784円(夫婦2人分※2

※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(対前年度比+1300円)です。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

厚生年金は40年間「会社員として月額45万5000円(平均)を稼いだ夫」と「ずっと専業主婦もしくは自営業だった妻」の組み合わせをモデル世帯と想定。上記の年金額は、「夫の老齢厚生年金+夫婦2人分の老齢基礎年金」となります。