野山が美しく色づきはじめています。朝晩の冷え込みに、温かい飲み物が恋しくなる季節となりました。
今年も残すところあと2カ月あまりとなり、ご自身の老後資金の備えについて、改めて考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「人生100年時代」と言われる今、リタイア後の生活資金の確保は、現役世代だけでなく、すでに老後を迎えたシニア世代にとっても避けてはとおれない重要なテーマとなっています。
本記事では、「70歳代の二人以上世帯」における《貯蓄・年金・生活費》についてわかりやすく解説します。
1. 【何が見直された?】2025年6月13日に「年金制度改正法」が成立
2025年6月13日に年金制度改正法が成立しました。
今回の改正は、働き方や家族構成の多様化に対応した年金制度の見直し、私的年金制度の拡充を通じて、老後の生活の安定と所得保障機能の強化を目指すものです。
本章では、主な改正ポイントを整理して見ていきます。
1.1 【主な改正ポイント】年金制度改正の全体像を見る!
社会保険の加入対象の拡大
- 短時間労働者の加入要件(賃金要件・企業規模要件)の見直し(年収「106万円の壁」撤廃へ)
在職老齢年金の見直し
- 支給停止調整額「月62万円」へ大幅緩和(2025年度は月51万円)
遺族年金の見直し
- 遺族厚生年金の男女差を解消
- 子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
- 標準報酬月額の上限を、月65万円→75万円へ段階的に引き上げ
私的年金制度
- iDeCo加入年齢の上限引き上げ(3年以内に実施)
- 企業型DCの拠出限度額の拡充(3年以内に実施)
- 企業年金の運用の見える化(5年以内に実施)
今回の改正は、公的年金制度が一人ひとりの働き方や将来設計と強く結びついていることを示しています。
総務省の「2024年(令和6年)労働力調査」によると、65歳以上の就業者数は930万人(前年比+16万人)に達し、シニア世代の就労は増加傾向にあります。
また、厚生労働省のデータでは、平均寿命(男性約81歳、女性約87歳※1)と健康寿命(男性約73歳、女性約75歳※2)の差が、男性で約8年、女性で約12年あることが明らかになっています。
この差は、多くの高齢者が「医療や介護に費用を必要とする期間を過ごす」可能性を示しています。
そのため、現役のうちから計画的に貯蓄や資産形成を進めることが、老後の安心につながるといえるでしょう。
※1 平均寿命:2022年 男性81.05歳、女性87.09歳・2023年 男性81.09歳・87.14歳(「令和5年簡易生命表の概況」)
※2 健康寿命:2022年 男性72.57歳、女性75.45歳(「健康寿命の令和4年値について」)

