3. シニアが働きやすい環境へ「在職老齢年金の基準額62万円に見直し」

2025年6月13日に成立した年金制度改革関連法には、年金をもらいながら働き続けたいシニアが気になる「在職老齢年金制度」に関する見直しも盛り込まれています。

3.1 「在職老齢年金制度」の見直し

在職老齢年金とは、60歳以降で老齢厚生年金を受給しながら働いている場合、年金額(※)と報酬(給与・賞与)の合計が基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる制度のことです。
(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。

支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)

支給停止調整額は年度ごとに少しずつ見直しがおこなわれてきました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:62万円

今回の改正(2026年4月から適用)では、51万円(2025年度金額)から62万円へと大幅に引き上げられることが決まりました。

厚生労働省の試算では、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになるとされています。

この引き上げにより、年金の減額を気にして「働き控え」をするシニア世代が、より自由に働き方を選べるようになると考えられるでしょう。

4. シニアの暮らしに大切な資金

本記事では、就労に関連する給付金についていくつか確認してきました。申請しないともらえない給付金もありますので、どんな種類のものがあるかはしっかりと覚えておくといいですね。

長寿時代の今、老後の生活を年金だけでまかなうのは不安という方も多いでしょう。しかし、今回ご紹介した再就職手当や高年齢雇用継続給付、年金生活者支援給付金や加給年金といったお金は、生活にゆとりを生み、趣味や旅行、あるいは「自由に働き方を選ぶ」といった、あなたの暮らしの選択肢をひろげるための大切な資金となるかもしれません。

これらの制度は、「自分で情報を知り、必要な要件を満たし、そして自ら申請する」ことで初めて受け取れるものです。手続きが面倒に感じるかもしれませんが、「知っているか知らないか」で受け取れるお金に大きな差が出ます。
しっかり情報を得て、自分の理想的な働き方を選び、お金の不安を少しでも減らしていけるといいですね。

参考資料

矢武 ひかる