7. 【年金制度改正法が成立】働く人々にかかわる改正ポイントをチェック
公的年金は「老後の受給額」にとどまらず、働き方やキャリアプラン、さらには人生設計全般に直結する重要な制度です。
2025年6月13日には、国会で年金制度改正法が成立しました。
ここでは、その改正内容の中から、働く人の「仕事と暮らし」に大きな影響を及ぼす見直しポイントを取り上げて紹介していきます。
7.1 見直しポイント1:短時間労働者の加入要件の見直し
- 賃金要件の撤廃:3年以内にいわゆる「年収106万円の壁」撤廃へ
- 企業規模要件の撤廃:10年かけて段階的に対象の企業を拡大(※)
※2025年7月時点では「51人以上」
7.2 見直しポイント2:個人事業所の適用対象の拡大
2029年10月からは、個人事業所における社会保険の適用対象(※)が拡大され、従業員5人以上であれば全業種が対象となります。
なお、2029年10月時点で既に存在している事業所については、当面の間は適用除外となります。
※2025年7月現在「常時5人以上の者を使用する法定17業種」は加入必須。(法定17業種とは:①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積卸、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業
7.3 見直しポイント3:在職老齢年金の見直し
2026年4月からは、年金が減額される基準額(※)が「月収51万円(2025年度時点)から62万円」へと引き上げられ、働きながらでも年金を満額受け取りやすくなります。
※支給停止調整額:年金を受給しながら働くシニアの「賃金+老齢厚生年金」の合計がこの金額を超えると、年金支給額が調整される。
7.4 見直しポイント4:保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
厚生年金などの保険料や年金額を算定する際の賃金上限(※1)が、「月65万円から75万円」へと段階的に引き上げられます(※2)。
これにより、従来よりも現役時代の収入に見合った年金を受け取れるようになります。
※1 標準報酬月額:厚生年金や健康保険の保険料、年金額を計算するために、月々の報酬と賞与を一定の幅で区切った基準額のこと
※2 2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円に引き上げ
8. 年金生活に向けて少しずつでも準備を進めていきましょう
本記事では、公的年金制度の仕組みや、年代別の平均的な年金受給額について解説していきました。
日本では少子高齢化が進んでいるため、現役世代が年金世代を支える仕組みの持続性や、社会保障の財源確保が課題となっています。
こうした状況を考えると、老後の生活資金は年金だけに頼るのではなく、自助努力がより一層重要になってくるでしょう。
昨今では、老後に向けて資産運用を行う方が増えてきていますが、利益が期待できるだけではないことを理解しておく必要があります。
価格変動リスクなどを踏まえたうえで、金融商品の特徴をよく確認しておくことが大切です。
この機会にぜひ、老後のために今できることを一度見直してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「厚生年金の保険料」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
菅原 美優