明治の学校でも最初は一般の唱歌として教えられ、明治26(1893)年に文部省告示で事実上の国歌になります。正式に国歌となるのは、平成11(1999)年に施行された国旗国歌法からです。

同法に記載されているのは、1番のみです。つまり現在、正式な日本国歌といえるのは、よく知られた1番の君が代だけ。その結果、世界一短い国歌とされています(約45秒)。

さざれ石の巌は、ここにある

君が代が物議をかもすのは、「君」の意味です。戦争中は天皇を指すという傾向があったようですが、本来の意味は尊敬する人や愛おしい人を指しています。最近は、元歌に「我が君」とあることから恋人、家族、国家など広く解する傾向がみられます。ちなみに「我が君」から「君が代」に変わるのは、鎌倉時代初期の「和漢朗詠集」からのようです。

また、「さざれ石」って何? という声もよく聞きます。「細石」と書き、小さな石です。石に含まれた石灰質が雨水で溶けだし、粘着力の乳状液となって多数の細石をつなぎ、大きな巌となったものです。

君が代に詠われた「さざれ石の巌」は岐阜県揖斐川町に現存しています(さざれ石公園)。ほかに、三重県二見浦の夫婦岩、京都府の勧修寺、賀茂御祖神社、日本一の大きさを誇る同府上京区の護王神社のさざれ石の巌などもあります。護王神社のさざれ石には苔もついているそうですので、君が代のイメージにより近そうです。

参考:『国のうた』弓狩 匡純、『世界の国歌』国歌研究会

間宮 書子