4. 対象となる人にはお知らせが届く!年金生活者支援給付金の「請求方法」

「年金生活者支援給付金」は、支給要件を満たすと自動で年金に上乗せされるわけではありません。受け取るためには請求手続きが必要です。対象となる人には、お知らせを兼ねた請求書が届きます。

4.1 すでに年金を受給中の人の場合

すでに年金を受給している人が、所得の変動により「年金生活者支援給付金」の支給対象となった場合、毎年9月の第1営業日から順次、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。

請求書が届いたら、必要事項を記載して、切手を貼付の上ポストに投函しましょう。

また、これから65歳を迎える人には、誕生日の3カ月前に、年金受給に必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封されて年金生活者支援給付金請求書が届きます。

同封されている給付金請求書に必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降、年金事務所に年金の請求書といっしょに提出しましょう。なお、繰上げ受給をしている場合は書類の様式が異なります。

5. 請求後いつから給付金の支給対象になる?

「年金生活者支援給付金」の支給対象となるのは、原則として「手続きをおこなった翌月分」からです。

ただし、新規に基礎年金の受給権を得た人の場合は異なるため注意しましょう。

受給権を得た日(※)から3カ月以内に「年金生活者支援給付金」の認定請求の手続きをおこなうことで、年金の受給権を得た日に「年金生活者支援給付金」の認定請求の手続きもおこなったものとみなされるため、さかのぼって支払われます。

受給権を得た日から3カ月を過ぎた場合は、手続きをおこなった翌月分から支給対象となります。もらいそびれないためにも、申請書類は早めに提出しましょう。

※老齢基礎年金の繰上げ受給中の人は、65歳到達の日。老齢基礎年金の繰下げ受給を選択する人は、繰下げの申出を行った日。

6. 年金制度改正、具体的にどこが変わるの?見直しポイントを解説

2025年6月13日、年金制度改正法が成立しました。働き方や家族構成などの多様化に合わせた年金制度の整備、私的年金制度の拡充などにより、老後の暮らしの安定や、所得保障機能の強化に繋げていくことが主な狙いです。

今回の改正の主な見直しポイントを整理していきましょう。

6.1 年金制度改正の全体像《主な見直しポイント》

社会保険の加入対象の拡大

  • 短時間労働者の加入要件(賃金要件・企業規模要件)の見直し(年収「106万円の壁」撤廃へ)

在職老齢年金の見直し

  • 支給停止調整額「月62万円」へ大幅緩和(2025年度は月51万円)

遺族年金の見直し

  • 遺族厚生年金の男女差を解消
  • 子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする

保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

  • 標準報酬月額の上限を、月65万円→75万円へ段階的に引き上げ

私的年金制度

  • iDeCo加入年齢の上限引き上げ(3年以内に実施)
  • 企業型DCの拠出限度額の拡充(3年以内に実施)
  • 企業年金の運用の見える化(5年以内に実施)

こうした内容からも、公的年金制度は現役世代の働き方やライフプランと深い関わりを持っていることがわかります。

7. ご自身の老後生活をイメージしてみよう

今回は「年金生活者支援給付金」について解説するとともに、令和のシニア世代がどのくらい年金を受け取っているのか、厚生労働省年金局のデータをもとに確認してきました。

年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得が一定の基準以下の方を対象に支給される制度です。条件を満たす場合は日本年金機構から請求書が届きますので、受け取りを逃さないよう、忘れずに手続きを済ませましょう。

また、国民年金の平均受給額は月額5万7584円、厚生年金(国民年金を含む)の平均は14万6429円となっています。ここから税金や社会保険料が差し引かれるため、実際に手元に残る金額はさらに少なくなります。

もし「自分は老後そこまでお金を使わない」と考える方であれば、特別な備えは必要ないかもしれません。ですが、月15万円前後の収入で暮らすのが難しいと感じるのであれば、やはり今のうちから老後に備えて少しずつ準備を進めておくことが大切です。

参考資料

鶴田 綾