2024年度「障害年金」を新規で請求しても、支給が認められなかった割合(=非該当の割合)が13.0%に達しました。これは、過去最高だった令和元年度(12.4%)とおおむね同水準になります。また、精神障害による申請では、不支給率が前年比で約2倍に増加しました。これが、いわゆる「障害年金の不支給問題」です。こうした事態をうけて、日本弁護士連合会は2025年7月10日に、障害認定基準の透明性と制度自体の公平性などを求める会長声明を公表しました。
障害年金制度は、生活や就労に困難が生じたときに支える大切な社会保障のひとつであり、まずは制度の全体像を知ることが重要です。「障害年金」は、一定の要件を満たした人が申請し、国に認定されることで受け取れる公的年金制度です。今回は、令和5年度の「障害年金業務統計」に基づき、新たに年金を受給しはじめた人や、再認定を受けた人の状況を分析しながら、制度の基本的なしくみと「どの障害が多く支給されているのか」支給状況についてわかりやすく説明します。
1. 【障害年金】どの障害が多く支給されている?
障害年金を受け取るためには、申請をおこない「受給資格がある対象かどうか」認定をされなければいけません。初めての申請は「新規裁定」、継続受給のための申請は「再認定」といいます。
1.1 【新規裁定】13万3614件の割合
日本年金機構が令和6年9月に発表した「障害年金業務統計(令和5年度決定分)診断書の種類別支給件数」によると、「新規裁定」は全体で13万3614件あり、そのうちの約70%が《精神障害・知的障害》、特に障害基礎年金では82.1%を占めていることがわかります。視覚・聴覚・肢体など含めた《外部障害》も「新規裁定」で19.3%、糖尿病などの《内部障害》11.2%であり、多様な障害に対応している実態がわかります。
1.2 【再認定】23万5011件の割合
一方、23万5011件あった「再認定」でも同様に《精神障害・知的障害》が74.5%と最多で、こちらも障害基礎年金では79.7%と約8割を占めていることがわかりました。これは、継続的な支援を要する精神障害の特性を反映しています。次に多いのは《外部障害》の14.5%、《内部障害》が11.0%で、こちらも長期的な経過観察を伴うケースが多いとされるのがわかります。
この統計から、新規・再認定の合わせて約36万件のうち、《精神・知的障害》に対する支援ニーズが高く、また、年金制度が多様な障害に対応していることがわかります。なお、診断書の種類ごとの支給件数は、年金の種類(基礎年金か厚生年金か)によっても傾向が異なります。
では、「実際に障害年金はどのような仕組みで、いくらもらえるのか?」障害年金の仕組みと年金額についてみてみましょう。