5. なぜ老後が不安?不安を解消し”ゆとりある老後”を実現するためのステップ
冒頭の調査によると、9割以上もの人が「老後は経済的に不安」と感じています。それはなぜなのでしょうか?
統計では、その大きな要素として、「物価が上がることへの不安」と、「自分の貯蓄・収入への不安」が挙げられています。
物価上昇は、私たち個人の力だけではどうにもできません。 そこで今回は、「貯蓄・収入の不安」を解消するために、「自分の経済状況をきちんと把握する」というステップを考えていきます。
5.1 自身の世帯の収入・支出・貯蓄を知る
将来の経済的な不安を軽減させるためには、平均値を知ることと同じくらい、「自分自身の状況を把握すること」が重要です。世帯の老後の収支を把握することで、老後のために必要な貯蓄額が見えてきます。
具体的には、以下のようなステップが必要になります。
老後収入(年金)の把握
年金受給前の方は、ねんきん定期便の確認やオンラインシミュレーションツールの活用が将来の収入を知る有効な手段です。先を見据えた計画には、この情報が欠かせません。
毎月の生活費の明確化
まずは月ごとの家計記録をつけ、実際の支出パターンを見える化しましょう。この作業は無駄な出費の発見にもつながり、家計改善の第一歩となります。
貯蓄状況の正確な認識
定年後は収入が大幅に減少するため、それまでに築いた資産が生活の基盤となります。現在の貯蓄残高と老後必要額を比較し、具体的な生活設計を練ることが重要です。
世間一般の平均値や中央値はあくまで参考情報であり、最終的には自分自身の状況を正確に分析することが大切です。自分の世帯の数字を冷静に見つめ、必要な準備を整えることで、安心感を持って老後を迎えることができるでしょう。
5.2 物価上昇に備える
次に、もう一つの大きな不安材料である「物価上昇」に備えるためには、どのような対策ができるのかを考えていきましょう。物価上昇という経済現象自体は、個人の力で抑えることはできません。しかし、その影響に備えることは十分に可能です。
効果的な対策の一つとして、積立投資などの金融商品を活用する方法があります。
特に、物価と連動するタイプの資産に投資を行うことで、物価が上がっても資産価値が同じように増える可能性があり、実質的な購買力の維持に役立ちます。
もう一つの現実的な選択肢としては、「働く期間を延ばす」ことが挙げられます。物価が上がる局面では、賃金もある程度上昇する傾向にあります。
そのため、就労期間を延ばし、収入を得る期間を長くすることは、物価上昇による老後不安を軽減するうえで有効な手段となるでしょう。収入を得る期間を延ばすことは、物価上昇の波に対する強力な防波堤となり得るのです。
6. 「老後の不安」の正体を知れば、備えるべきことが見えてくる
本記事では、統計データをもとに、65歳以上の二人以上世帯の貯蓄と収支状況を解説し、多くの人が抱える「老後の不安」の正体に迫りました。
統計では「4000万円以上の貯蓄がある世帯が2割」という驚きの結果もありましたが、他人と比べて一喜一憂する必要は全くありません。
必要な貯蓄額は、家族構成やライフスタイルによって全く異なるからです。
多くの人が感じる経済的な不安は「よく分からない」という感情からきています。大切なのは、まず「平均値」と「自分の家計」を冷静に比較し、自分たちに必要な金額を知ること。
そして、資産運用や長く働くといった備えを検討することで、漠然とした不安は「具体的な対策」へと変わっていきます。この記事が、皆さまの豊かなセカンドライフへの第一歩となれば幸いです。
参考資料
- 内閣府「令和6年度 高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)の結果(全体版)」
- 統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年平均結果」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
斎藤 彩菜