地方都市移住のメリットは目標代替率の引き下げ

以前、『退職後に地方都市への移住を考えるならどこがいいのか?』で退職後に地方都市に移住することの意味をまとめましたが、改めて家賃でも比較してみたいと思います。

まずは改めて「なぜ地方都市移住を検討すべきなのか」を振り返っておきましょう。退職後の生活資金必要総額を考える際には“3つの掛け算”を使うことを紹介してきました。具体的には、

①退職後の必要生活資金総額=退職後年収×退職後の生活年数
②退職後年収=現役最後の年収×目標代替率
③資産形成額=年収×資産形成比率

となります。

①の式では「退職後の生活年数」が自分でコントロールできる数値で、これを下げるのが「長く働くこと」です。②の式では「目標代替率」が自分でコントロールでき、退職後の生活“費”水準を引き下げることで可能になります。その方法のひとつが、「地方都市移住」です。そして最後の③の式では、「資産運用」が求められるというわけです。

民間賃貸の家賃は東京都区部の半分以下

「地方都市移住」では消費者物価指数が低い(=生活“費”水準が低い)のに、生活水準は変わらないということが重要なポイントですが、今回のコラムでは消費者物価指数全般ではなく、生活費のなかでも重要な要素である「家賃」を比較してみました。

ところで2018年4月に実施したサラリーマン1万人アンケートでは、退職後の最も大きな支出・制約は何かを聞いています。回答者(複数回答)の60.2%が「医療費」、29.1%が「食費」、27.3%が「税金・社会保険料」、26.9%が「介護費」、17.1%が「光熱費」、そして14.0%が「家賃」を挙げています。

「家賃」の比率は6番目ですが、「医療費」、「税金・社会保険料」、「介護費」は自分でなかなかコントロールできませんから、コントロールできる要素としての「家賃」は意外に重要な生活“費”水準の引き下げ策といえます。

そこで、政府の発表している小売物価統計調査から2017年の年間平均の民営家賃を都道府県庁所在地でランキングしてみました。東京都区部を100として指数化すると、50%以下の都道府県庁所在地が実に34都市におよび、最も低い山口市では40.5%、次の松山市は40.7%と4割の家賃で住めるのです。

ちなみに、『退職後に地方都市への移住を考えるならどこがいいのか?』で紹介した移住ランキング上位の5都市は、前橋、岐阜、奈良、松山、鹿児島でしたが、このうち4都市が家賃ランキングでも50%以下に含まれています。

民営家賃の都道府県庁所在地別ランキング

注:小売物価統計調査2017年年間平均から都道府県庁所在地のみを抽出し、東京都区部を100として
指数化。50%未満のみを掲載

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史