中国経済は足元で課題山積だが、中国政府の経済対策へのコミットメントは強い

長期的には、中国が抱える経済的な課題は2つあります。

ひとつは「新常態」、すなわち内需主導型の経済への移行という課題です。改革開放の時代からの輸出主導型の経済発展という経済構造からの脱却を進め、消費主導型の経済発展の実現と貿易黒字の削減に取り組むことは、米国が仕掛ける貿易摩擦を通じた圧力だけが理由ではなく、本質的に中国経済が長期的に成長していくためには不可避な課題であり、中国の利益にかなうものです。

輸出依存からの脱却に加えて、もうひとつは、特に地方政府や国営企業に見られるような債務比率の多さをいかに改善するかという課題です。抱え込んでいる累積債務を早期に処理し、債務依存の体質から脱却することには取り組んできていますが、なかなか解消する途は容易ではありません。

現実に、経済成長率が足元で低下する中では、意図に反して「国進民退(国営企業は発展して、民間企業が衰退する)」が進んでしまったり、国家が経済を主導する「計画経済」に回帰することで困難な局面を乗り切ろうとしてしまうのかもしれません。これらには、既に一部に批判が出ていますが、長期的な課題解消への姿勢は不変でしょう。一時的には社会の信用力が低下することもあり得ますが、資金の流れを維持しながら改革を進めていくことになるでしょう。

さて、年明けからは、2月末を期限とする米国との通商協議が本格化する予定です。中国政府にとっては、今年の流れを決めるヤマ場をいきなり迎えることになるでしょう。トランプ米大統領と習主席は昨年12月1日の首脳会議で、米中の貿易摩擦をこれ以上過熱させないようひざ詰めで協議することに合意しました。

中国政府は合意後、米国製自動車に対する報復関税を撤廃し、700品目余りの輸入関税を引き下げたほか、米国産原油と液化天然ガス・大豆の購入を再開するなど、輸入拡大策を次々と打ち出しています。昨年末にも、一部の輸出入品目の関税を2019年に撤廃する方針を明らかにして輸入促進の姿勢を示し、その本気度が十分うかがえる行動をとってきています。

また、知的財産権の侵害との米国の訴えに対しても強制的技術移転を防止するための法案を起草することに着手して、応じてきています。

ただ、貿易摩擦の解消には時間がかかります。実際に、中国の足元の貿易黒字は、関税適用前の駆け込み需要もあり、むしろ増加している有り様です。かつての日米貿易摩擦がそうであったように、議論と妥協を繰り返し、思うようにはついてこない黒字削減の成果に繰り返し向き合い、解消には、長い時間を要するプロセスとなるでしょう。

中国経済のダウンサイドリスクへの手当てを短期的に施しながら、米国からの圧力をやり過ごし、長期的な経済課題に取り組むという中国政府の経済政策は、2019年も引き続き難儀なものであることは間違いなさそうです。

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長谷川 建一
  • 長谷川 建一
  • ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク
  • 取締役兼CIO (Chief Investment Officer)

京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。
2004年末、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に移り、リテール部門マーケティング責任者として活躍。2009年からは国際部門でアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク)にてCOOに就き、2017年3月よりCIOを務める。