この記事の読みどころ

九州電力が川内原子力発電所を再稼働させたが、株式市場が期待していたイベントが確定したことや株式市場における“中国ショック”の影響により株価は反落しています。

電力株の短期的なラリーは一段落した印象です。

中長期では、中部電力(証券コード9502)が日本のエネルギー政策の変化の中で中心的な役割を担う可能性を感じます。

浜岡原発の稼働なしに当期純利益が黒字に

2015年3月期決算では、電力10社及び電源開発のうち、関西電力と九州電力以外の電力会社の当期純利益は黒字となりました。2015年3月期決算発表と前後して、そこまでTOPIXに対してアンダーパフォームしていた電力株もパフォーマンスが改善してきました。中部電力を見ると、株価は2015年6月に2,000円台を回復するなど、東日本大震災後に下落する前の水準にまで回復してきました。

中部電力の2016年3月期通期の会社予想は、営業利益が1,600億円、経常利益が1,300億円、当期純利益が900億円と、2008年3月期の利益規模にまで回復すると予想されています。2008年3月期には、営業利益が1,679億円、経常利益が1,234億円、当期純利益が706億円という実績で、この当時の株価は3,000円台をつけていました。その後、東日本大震災による浜岡原子力発電所の稼働停止や2016年に始まる電力小売り参入の全面自由化など、業績に影響を及ぼす不確定な要素を引き続き抱えているとはいえ、中部電力株の出遅れ感は否めません。

ただし、中部電力は浜岡原子力発電所の稼働なしに当期純利益で黒字になっており、決算発表時の会社資料によると、燃料調達価格の下落で、2016年3月期の上期までは収益改善トレンドを期待できそうです。

中部電力に注目する理由

また中長期では、2015年4月に設立された中部電力と東京電力の合弁会社JERA(ジェラ)に注目しています。JERAは、「燃料上流・調達から発電までのサプライチェーン全体にかかわる包括的アライアンス」を実施する新会社、とされています。東京電力が実質国有化されており、東京電力が今後どのような扱いになるかは未知数ですが、将来的にエネルギー調達だけではなく、東京電力の優良事業や資産の一部が中部電力側に取り込めるのだとすれば、中部電力にしてみれば事業拡張のきっかけにはなります。

余談ではありますが、中部電力は、50ヘルツと60ヘルツの混合地域が担当エリアに含まれている珍しい電力会社です。東日本大震災後に周波数の違いから西日本の余剰電力を関東に送れない状況が起こりましたが、こうした状況に対応するための設備投資などは、中部電力がカギを握っていると言えます。既に稼働している東清水変電所は中部電力の設備です。こうした点からも、中部電力は日本のエネルギー政策を考える上で注目すべき対象です。

注:本記事は個人投資家向け経済金融メディアLongine(ロンジン)の記事をダイジェスト版として投信1編集部が編集し直したものです。

【2015年9月1日 投信1編集部】

■参考記事■

>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント

>>ネット証券会社徹底比較:株も投資信託も気になるあなたへ

>>資産運用の始め方に迷ったらとりあえずバランス型投資信託

LIMO編集部