1.1 2014〜2016年:消費税増税による負担増への対策
2014年から2016年に行われた給付は、消費税増税への対応が目的です。
2014年4月に、社会保障制度を維持するために、それまで5%とされていた消費税率が8%に引き上げられました。この負担を緩和するため、政府はとりわけ増税の影響を受けやすい住民税非課税世帯に3年間「臨時福祉給付金」として1万8000円を支給したのです。
2016年をもって給付金は終了しましたが、わずか3年後の2019年には、消費税率が8%から10%に引き上げられました。このときは給付事業がなく、代わりに住民税非課税の年金世帯が対象となる「年金生活者支援給付金」がスタートしました。
こちらは基準額をもとに給付される金額が決まる仕組みです。2025年度の基準額は5450円であり、臨時福祉給付金よりも少ない金額です。増税負担を緩和する給付は縮小傾向にあるといえるでしょう。
1.2 2020〜2022年:新型コロナウイルスによる経済冷え込みへの対策
消費税が10%に引き上げられてから半年もせずに、国内外で「新型コロナウイルス」が蔓延しました。外出自粛によりさまざまな業種・業界が影響を受け、経済は冷え込みました。
こうした状況のなかで消費を促進すべく実施されたのが、2020年の全世帯への10万円給付です。それまでの給付事業の金額を大きく上回る「10万円」がすべての世帯に給付されるというインパクトの強さから、記憶に新しい人も多いでしょう。
2021年には、住民税非課税世帯に対象を絞り、さらに10万円を支給しています。過去に類を見ない金額での支給により経済の活性化を狙いましたが、この給付金には課題もあったようです。(詳しくは後述)
また、2022年からはロシアがウクライナに侵攻したことで、エネルギー資源価格の高騰が目立ちました。影響を受けやすい低所得者世帯に対し「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金」として5万円が支給されました。エネルギー価格はその後も高騰が続いており、現在はガソリンの暫定税率廃止に向けた動きが見られます。
1.3 2023〜2025年:国内の物価高への対策
世界的なコロナ禍が落ち着きかけた2023年から、前述のウクライナ侵攻に加えて円安が急速に進み、国内の物価上昇が目立つようになりました。エネルギー関連だけでなく、食品やサービス費などさまざまなものが値上げされる一方、賃金が物価以上に伸びてこない状況に陥ってしまい、私たちの生活は苦しくなってきています。
この物価高への対策として、2023〜2024年には最大10万円の給付が、住民税非課税世帯を対象に実施されました。また、2025年1月ごろからは最大3万円の給付が同じく住民税非課税世帯を対象に実施されました。
こうして見ていくと、給付は最初こそインパクトがあるものの、継続して行われると金額が下がっていく傾向にあるようです。限定的な支援をして自立した生活を促すためとも考えられますが、果たして効果はあるのでしょうか。次章では、給付金事業の課題を解説します。