この記事の読みどころ
- 海外投資家は2015年8月に大量の日本株の現物を売りました。
- しかし2015年春に追加購入したポジションは含み損を抱えており、戻り売りの圧力が残りそうです。
- 国内公的資金が下支え役として効果を発揮できるかがポイントになるでしょう。
海外投資家は3か月連続で日本株の現物を売った
日本取引所グループの発表によれば、海外投資家の日本株(現物)の売買は、2015年6月以降3カ月連続でネット売り越し(売った金額が買った金額より多い状態)になりました。6月約1,700億円、7月約3,000億円に対し、8月は約1兆1千億円の売り越しとなり金額も膨らんでいます。中国リスクをきっかにした世界的なリスクオフの動きが東京市場にも大きな影響を及ぼしています。
ハロウィーン緩和(2014年11月)以降、海外投資家は売買が頻繁に入れ替わる
海外投資家の日本株現物の売買動向を振り返ってみましょう。
アベノミクスと黒田緩和が始まった2013年にはほぼ毎月買い越しとなり、年間通算でも大量の買い越しになりました。しかし、2014年に入ると売ったり買ったりの繰り返しになり小康状態に入りました。
ところがハロウィーン緩和が実施されると状況が一変します。海外投資家は再び積極的になり、2014年11月から12月に1兆4,000億円以上買い越したました。この時のTOPIXの水準はおよそ1,400ポイントです(単純化のため円ベースのTOPIXで話をすすめます)。
興味深いのはここから。売り買いのトレンドが短期間で入れ替わるのです。年が変わった直後の2015年1月には約9,000億円の売越しに転じました。そして、2015年2月から5月にかけて、約3兆7千億円の買い越しに転じます。ところが6月以降は一転3カ月連続で売りに転じ、3か月累計で1兆6千億円を超える売り越しとなりました。
2015年春の買いは含み損を抱えていると推測される
単純化のために株式現物で取引所を通じて取引された金額に注目することにしましょう。2015年春の海外投資家の買い越しは、TOPIX1,600ポイントの水準だったと思われます。現在のTOPIXは春先よりやや低い約1,450-1,500ポイントです。従って、ドル円はやや円高になっているものの、春先のポジションはおそらく含み損を抱えている可能性もあります。含み損のポジションだからと言ってすぐに売却されるとは限りませんが、ハロウィーン緩和以降の海外投資家の動きは短期的に見えます。よって、この春のポジションの整理の動きがもうしばらく続くと考えておいたほうがよいかもしれません。さらにいえば、TOPIXが1,400を下まわるとハロウィーン緩和直後の2014年11月に買われたポジションも含み損になる可能性が高まるとも考えられます。
注目は国内の年金・日銀の市場底支え
リスクオンの環境が整えば海外投資家の売り圧力は緩和するでしょう。しかし、そうでなければ海外投資家のポジション圧縮が続くと覚悟したほうが良いでしょう。買いを支える主体として、国内の年金と日銀の動向から目が離せません。
LIMO編集部