物価高騰や医療費の制度見直しが相次ぐ中、75歳以上の医療保険料が家計に与える影響が改めて注目されています。
2025年度の後期高齢者医療制度では、昨年度と同じ保険料率が適用されるものの、都道府県ごとの負担格差や、収入による差がより顕著になっているのが現実です。
また、政府は高額療養費制度の自己負担引き上げを一時見送ったものの、将来的な医療費の増大は避けられず、「次はいつ制度改正がくるのか」と不安を抱えるシニア世帯も少なくありません。
本記事では、後期高齢者医療制度の仕組みを整理したうえで、年金収入195万円・82万円の場合における都道府県別の保険料目安を紹介します。
1. 「後期高齢者医療制度」とは?
日本では、「国民皆保険制度」に基づき、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられています。
加入する医療保険の種類は、主に職業や年齢によって異なります。
- 会社員:協会けんぽ、健康保険組合
- 公務員や教職員:共済組合
- 自営業者や退職者:国民健康保険
そして、75歳以上になると、原則としてすべての人が「後期高齢者医療制度」へ移行します。
ただし、65歳以上で一定の障害認定を受けた場合には、本人の申請により後期高齢者医療制度に加入することも可能です。
1.1 75歳未満でも加入できるケースがある
本来、後期高齢者医療制度は75歳以上が対象ですが、65歳以上74歳以下で一定の障害認定を受けている方は、本人の申請により加入することが可能です。これを「障害認定による特例加入」と呼びます。
以下のいずれかに該当する場合、申請により制度加入が認められます。
- 障害年金1級または2級
- 身体障害者手帳1級、2級、3級または「4級の一部」
- 精神障害者保健福祉手帳1級または2級
- 東京都愛の手帳(療育手帳)1度または2度
※身体障害者手帳の「4級の一部」とは、以下に該当するものです。
- 下肢障害4級1号(両下肢のすべての指を欠くもの)
- 下肢障害4級3号(一下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの)
- 下肢障害4級4号(一下肢の著しい機能障害)
- 音声・言語機能障害
※具体的な該当要件は自治体ごとに異なる場合があります。詳しくは、お住まいの市区町村または後期高齢者医療広域連合にご確認ください。
1.2 医療費負担のしくみ
後期高齢者医療制度は、各都道府県に設置された「後期高齢者医療広域連合」によって運営され、全国すべての市区町村が参加しています。
この制度における医療費の自己負担割合は原則として1割ですが、所得に応じて2割または3割に引き上げられる場合があります。
- 一般所得者等(課税所得28万円未満):1割負担
- 一定以上所得者(課税所得28万円以上145万円未満):2割負担
- 現役並み所得者(課税所得145万円以上):3割負担