7. 【在職老齢年金制度の見直し】年金が全額支給される基準額を確認
2025年6月13日、国会で年金制度改革関連法が成立しました。
多様化する働き方やライフスタイルにフィットする年金制度を目指すものです。
この改正にはパートなどで働く人の社会保険加入対象の拡大(いわゆる「106万円の壁」の撤廃が関連)、遺族年金の見直し(遺族厚生年金の男女差解消、子どもの遺族基礎年金受給の要件緩和)など、注目すべきポイントがいくつかあります。
今回は、その中でも働くシニアへの影響が大きい「在職老齢年金制度の見直し」について見ていきましょう。
7.1 「在職老齢年金制度」の見直し
在職老齢年金とは、60歳以降で老齢厚生年金を受給しながら働いている場合、年金額(※)と報酬(給与・賞与)の合計が基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる制度のことです。
(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。
支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)
支給停止基準額は年度ごとに少しずつ見直しがおこなわれてきました。
- 2022年:47万円
- 2023年:48万円
- 2024年:50万円
- 2025年:51万円
- 2026年:62万円
今回の改正(2026年4月から適用)では、51万円(2025年度金額)から62万円へと大幅に引き上げられることが決まりました。
厚生労働省の試算では、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになるとされています。
この引き上げにより、年金の減額を気にして「働き控え」をするシニア世代が、より自由に働き方を選べるようになると考えられるでしょう。
8. 老後の生活に向けて「家計収支」や「年金の見込額」を確認しましょう
ここまで、【65歳以上】夫婦のみの無職世帯における「平均的な毎月の収入・支出」をご紹介しました。
また《勤労世帯を含む》貯蓄額「平均・中央値」や、2019年~2024年の《平均貯蓄額》の推移についても解説しました。
あくまでも平均額ではありますが、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合、毎月約3万円の赤字が出ていることがわかりました。
ご家庭の状況などにより家計収支はそれぞれ異なりますが、物価高を踏まえると「公的年金のみ」では豊かな老後生活を送ることは難しい状況にあるようです。
現役時代のうちから、老後の生活に向けて「家計収支」や「年金の見込額」などをもとに、老後不足する金額がどれくらいあるのか確認してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「第3 家計調査の貯蓄・負債編の見方」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
マネー編集部貯蓄班