近年、60歳以上でも仕事を続ける働くシニア層の方々が増えています。内閣府の最新調査(令和6年度)では、60歳以上の42.7%が収入のある仕事をしていると回答。前回調査(令和元年度)37.3%より増えており、とくに「定期的に働く人」が増加しています。
こうした就労意欲の高まりもある中で、政府は年金制度の見直しを進めています。
令和7年(2025年)6月に成立した年金制度改正法では、短時間勤務者でも社会保険に加入しやすくなる措置が盛り込まれました。あわせて、在職老齢年金制度の見直しなども含まれており、働くシニアの収入と年金が両立しやすくなる制度設計が進んでいます。年金や貯蓄だけに頼らず、「働いて収入を得る」選択がしやすくなるような環境整備が今後さらに進むと予想される中で今回は、60歳以上の就労実態をふまえ、年金制度改正のポイントを解説します。
※本記事で引用している「収入のある仕事」とは、内閣府調査における自己申告ベースのデータです。労働力調査などで用いられる「就業者」とは定義が異なる場合があります。
1. 【改正ポイント①在職老齢年金の見直し】年金カットの基準緩和で働くシニアに追い風!
令和7年(2025年)6月に成立した年金制度改正法では、「在職老齢年金制度」の見直しが盛り込まれました。この制度は、厚生年金を受給しながら働く人が対象で、収入が一定額を超えると年金が減額されるしくみです。
今回の改正により年金が減額される基準額が、2025年度の月51万円から2026年4月は62万円に引き上げられます。この変更によって、これまで収入が理由で年金の一部がカットされていた人の多くが、年金を満額受け取れるようになる見通しです。
厚労省の試算では、約20万人が減額対象から外れるとされています。これにより、「働いたら損」と感じていたシニア層の就業意欲が高まり、働きながら安心して年金を受け取れる環境が整います。