2. 【改正ポイント②社会保険の対象者拡大】シニアの働き方次第で年金が増える?

厚生年金への加入対象となる短時間労働者には、シニア層が多く含まれていることが分かっています。

(厚生年金保険)短時間労働者の年齢構成

(厚生年金保険)短時間労働者の年齢構成

出所:厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

令和5年度末時点では、短時間で働く男性の約半数が60歳以上で、特に60〜64歳(17.9%)、65〜69歳(32.9%)の割合が高くなっています。一方で、女性は50〜54歳が最多で14.6%ですが、60歳以上は24.2%と全体の2割強近くを占めています。平均年齢は男性52.9歳、女性49.9歳であり、短時間労働者の高年齢化が進んでいます。

年金制度改正 社会保険加入対象の拡大

年金制度改正 社会保険加入対象の拡大

出所:厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」

2025年6月現在、短時間労働者が社会保険に加入するための5つの要件のうち、「賃金要件」と「企業規模要件」が撤廃されることになりました。これにより、いわゆる「106万円の壁」は3年以内に廃止される見込みです。また、企業規模に関わらず社会保険に加入できる制度も、今後10年かけて段階的に拡大されます。

2.1 Q:厚生年金をもらいながら、厚生年金保険に加入できるの?

A:はい、厚生年金を受け取りながら、厚生年金保険に加入して働くことは可能です。

働きながらでも老齢年金を受け取ることができますが、給与と老齢厚生年金の合計額が月51万円(2026年4月からは62万円)を超えると、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止される場合があります。これは「在職老齢年金」と呼ばれる仕組みです。しかし、厚生年金に加入し続けることで、年金額は増額します。具体的には、毎年10月に前年9月から当年8月までの加入期間が年金額に反映される「在職定時改定」が行われ、年金額が増加します。また、退職時にはそれまでの全加入期間が反映されて年金額が改定されます。注意点として、給与収入が多い場合はもらえるはずの厚生年金が減額される可能性があるため、ご自身の収入と年金額を把握し、事前に確認することが重要です。

ちなみに、在職老齢年金制度で支給停止の対象となるのは老齢厚生年金のみで、国民年金(老齢基礎年金)は影響を受けずに全額受け取ることができますのでご安心ください。

なお、加入対象が拡大する一方で、厚生年金には年齢制限(原則70歳まで)がある点にも注意が必要です。70歳以降に働いていても、原則として厚生年金の被保険者にはなれません。ただし、老齢年金の受給資格を満たしていない場合は、任意で加入することもできます(高齢任意加入)。