2.3 引き上げ後の収入上限額はいくらになる?

2026年の制度改正後も、在職老齢年金の基本的な仕組みは変わりません。年金の支給停止が始まる基準となる金額が「62万円」に引き上げられます。

【具体的な計算方法】

支給停止の判断基準は、先ほど説明をした「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額です。この合計が62万円を超えると、年金の一部が支給停止されます。

例えば、月10万円の老齢厚生年金の受給資格がある場合、支給停止されずに働ける収入の上限は月52万円(62万円−10万円)です。

3. 私たちの生活への影響は?おさえておきたい3つのポイント

実際に基準額の引き上げが実施されることにより、私たちの生活にどのような影響を及ぼすでしょうか。ポイントを解説していきます。

3.1 就業調整を行う必要がなくなる

まず1つめが、在職老齢年金制度の停止基準額が12万円上がることで、多くの高齢世代が就業調整を行う必要がなくなる点です。

65歳以上の在職老齢年金制度の状況

65歳以上の在職老齢年金制度の状況

出所:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」

現在、年金受給中の労働者のうち、約16%が在職老齢年金制度により年金額の一部または全部が支給停止になっていることが明らかになっています。停止されていない人の中には、年金が減額されないよう、意図的に労働時間や収入を制限している人も多くいると考えられています。

基準額の引き上げにより、より多くの収入を得ても年金が減額されない範囲が広がるため、就労意欲に応じた自由な働き方をすることができるようになります。