「65歳を過ぎても、まだまだ元気に働きたい」健康寿命の伸びとともに、このように考える人も増加しています。
しかし、「一生懸命働いたら、年金が減らされてしまった…」なんて話を聞いて、不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
給与額と年金額の合計によっては、受け取れる年金額が調整される「在職老齢年金制度」という仕組みがあります。この制度があることにより、働く時間をセーブしている人も少なくありません。
しかし、2025年6月、この「働き損」ともいえる状況を改善するための、新しい法案が国会で可決されました。
この記事では、在職老齢年金の仕組みと、今後の在職老齢年金制度がどのように変わるのか、働くシニア世代の方への影響について解説します。働きながら年金をもらう予定の方は、ぜひ参考にしてください。
1. 在職老齢年金とは
まずはじめに、在職老齢年金の制度について解説します。
1.1 制度の概要
在職老齢年金制度とは、60歳以上の方が、社会保険(厚生年金)に加入する働き方をしながら老齢厚生年金を受け取る場合に、収入と年金額に応じて、年金の一部または全額が支給停止される仕組みのことです。
制度のポイントとして、以下の点が挙げられます。
- 支給調整は老齢厚生年金のみ
この制度によって調整が行われるのは老齢厚生年金のみであり、老齢基礎年金は調整の対象外です。
収入額の多寡により、老齢基礎年金が減額されることはありません。
- 厚生年金保険の非加入者は対象外
「社会保険に加入するような」働き方をしている人が対象であるため、自営業やフリーランスの方は本制度の対象外です。収入額によって年金の受給額が調整されることはありません。
1.2 調整の仕組み
在職老齢年金制度によって年金額が調整されるかどうかは、以下の2つの合計額により決定します。
- 基本月額:老齢厚生年金の年額を12で割った額
- 総報酬月額相当額:{標準報酬月額(およそ毎月の給与額)+ 過去1年間の賞与額}を12で割った額
上記の合計額が、支給停止の基準となる金額(2025年度は51万円)を超えた場合に、年金額が調整されます。