一日中、座りっぱなしでパソコン仕事をしたり、長い時間、携帯をいじったりしていると、ついつい姿勢は悪くなりがち。姿勢が悪いと、見た目が悪くなるだけではなく、肩こりや疲れ、自律神経の乱れにもつながります。姿勢は毎日の積み重ねが影響してくるもの。実は普段の姿勢を良くするためには、体を支えるための筋肉がそれなりに必要です。しかし、男性と女性では体の筋肉のつき方が違うので、姿勢を美しく整えるために「鍛えるべき部分」も変わってくるのです。

 この記事では、『はたらく女性のコンディショニング事典』より、ぜひ女性に知っておいてほしい「効率的に姿勢を良くする」トレーニングをご紹介します。

姿勢を良くする2つの「インナーマッスル」

 ひと口に「姿勢を良くしよう」といっても、実は姿勢が悪くなる原因はさまざま。仕事中の「姿勢のゆがみ」が原因の場合もあれば、「筋力がない」ことで背中が丸まりお腹が前に出る人、「骨盤のゆがみ」から足を組んでしまう人など、いろいろなパターンが考えられます。

 ただ、どんな女性にとってもトレーニングすると効果的な部分が存在します。それが「骨盤底筋」と「内転筋」と呼ばれる2種類のインナーマッスルです。

「骨盤底筋」とは、その名の通り骨盤の底にあり、膀胱や直腸などを支えている筋肉の総称です。体を下から支える筋肉で、尿道・肛門などを締める役割も果たしています。「内転筋」は内ももにある筋肉の総称で、骨盤や姿勢を正しく保つために必要な、日常生活にも欠かせない筋肉です。

 それでは、姿勢を整えるのに効果的な「骨盤底筋」と「内転筋」のトレーニング方法を2種類ご紹介します。

姿勢を整えるトレーニング(1)〈図1・2参照〉

STEP 1
 まず、仰向けになり寝ころびます。足の裏は床につけ、膝を曲げます。かかとはお尻からこぶし2つ分、離しておきましょう。両手は体の横に伸ばして手の平を床に向けておきます。可能であれば、内ももにクッションや小さめのボールを挟みます。上からクッションやボールをたたかれても落ちないくらい強く挟むとトレーニング強度が増します。

図1 まず仰向けに寝転び、膝を曲げます。クッションを挟むとトレーニング強度がアップ!

STEP 2
 そこから足の裏で床を押してお尻を引き上げます。このときに足の裏全体(特に足の親指)で床をしっかりと踏みしめるようにしましょう。お尻は軽く締めるように力を入れて、膝は遠くに引っ張られるイメージです。そこで5回呼吸をしましょう。

図2 お尻に力を入れながら上に引き上げ、呼吸を5回

姿勢を整えるトレーニング(2)〈図3・4参照〉

STEP1
 もうひとつ、おすすめのトレーニングを紹介します。まず足を肩幅の2倍ほどに大きく開き、つま先はやや外側に向けます。両手を頭の後ろで組んで、胸を張ります。お尻が後ろに出ないように、上半身は垂直に保ちながら腰を下げていきます。このとき、膝が内側に入ってしまったり、上半身が前に倒れてしまったりしていないか確認しながら行いましょう。

図3 足を大きく開き、上半身をまっすぐ保ちながら腰を沈めます

STEP2
 立ち上がるときがポイントです! 脚の裏をしっかりと踏みしめてお尻を締めながら、内ももを引き寄せあうように立ち上がっていきます。少し股関節を突き上げるようにして立ち上がると、より内転筋と骨盤底筋にしっかりと力が入ります。
 

図4 腰を下げた状態から、お尻と内ももに力を入れながらゆっくり立ち上がっていきます

女性の「弱点」をカバーするための鍛え方

 では、なぜ骨盤底筋と内転筋を鍛えることが大切なのでしょうか。理由は、男女の筋肉のつきかたの違いにあります。そもそも女性は男性に比べて筋肉が少なく、かつ筋肉がつきにくい体のしくみをしています。女性ホルモンの「プロゲステロン」は脂肪をつきやすくさせ、男性ホルモンの「テストステロン」は筋肉をつきやすくする効果を持つことが大きな理由となっています。

「筋肉を維持しづらい」という弱点を持つ女性の場合、筋肉に頼らない姿勢づくりが重要になります。そこで大切になってくる考えが「引き上げる」という力です。ただがむしゃらに筋肉をつけようとしたところで、努力した分そのままの筋肉は女性にはつきにくいですし、それを維持するためにきついトレーニングを続けることも至難のワザ。

 さらには、たとえトレーニングをしっかりやったとしても、不要なアウターの筋肉がつくとごつごつした体となり、女性らしいシルエットが失われてしまいます。だからこそ、女性に必要なのは外側の筋肉を強化することではなく、重力に引っ張られてたるみやすい部分を引き上げる力なのです。

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美しい姿勢をキープするための「引き上げ力」をつけよう

「骨盤底筋」と「内転筋」、この2つのインナーマッスルは同時に鍛えることができます。両者はとても深いつながりのある筋肉のため、骨盤底筋を鍛えるトレーニングをすると、たいていが内転筋も鍛えられることになります。

 試しに、立った状態で内ももとお尻にキュッと力を入れてみてください。内ももに一枚の薄い紙を挟むイメージです。すると下腹にもキュッと力が入る感覚がないでしょうか。その「下腹のキュッとした力」こそ、骨盤底筋が反応した力です。このように、内ももと骨盤底筋は連動性が高く、どちらが緩んでいても体の衰えにつながります。

 先ほど紹介した2つのトレーニングも、骨盤底筋と内転筋を同時に鍛えることのできるものです。
1日に数分行うだけでも効果があるので、ぜひ、お風呂あがりなどに実践してみてください。

(監修:松尾伊津香)

■ 松尾伊津香(まつお・いつか)
プロボディデザイナー。大学で心理学を専攻後、アメリカでヨガを学ぶ。帰国後、ヨガインストラクター、女性専門ダイエットジムの店長・スーパーバイザーを経て、現在、疲労回復専用ジムZERO GYMにてプログラムディレクターを務めている。

松尾氏の監修書籍:
はたらく女性のコンディショニング事典

松尾 伊津香