3. 口座凍結前に「勝手にATMで預金を引き出す」のはダメなのか
銀行へ死亡の連絡をしなければ口座はそのまま利用できますが、知らせる前にATMから預金を引き出そうと考える人もいるでしょう。
しかし、その場合には次のようなリスクやトラブルが生じるおそれがあるため、慎重な対応が求められます。
3.1 リスク1:親族間でトラブルが起こる可能性がある
口座が凍結される前に、名義人以外が預金を引き出す行為は、他の相続人から「不正」と見なされる可能性があります。
引き出した資金は相続財産として遺産分割協議の対象となるため、無断で動かすと親族間の信頼を損ね、深刻なトラブルに発展しかねません。
3.2 リスク2:相続放棄ができなくなる可能性がある
相続では、故人が残した財産(プラス)だけでなく、借金などの負債(マイナス)も承継することになります。
借金が多額の場合は、家庭裁判所に申し立てて「相続放棄」を選択することが可能です。
しかし、口座が凍結される前に名義人以外が預金を引き出すと、その行為が「単純承認」とみなされ、相続放棄や限定承認の権利を失うおそれがあります。
このため、相続財産の全容が判明する前に預金を引き出すことは避けるべきです。
とはいえ、葬儀費用や故人の医療費など、急を要する支払いが発生する場合もあります。
そこで次章では、口座が凍結された後でも一部の預金を引き出せる「預金払戻し制度」について解説します。