3. 一部の預金を引き出すことができる「預金払戻し制度」とは?
「預金払戻し制度」とは、相続発生後に銀行口座が凍結された場合でも、家庭裁判所の手続きを経ることなく、相続人が一定の範囲内で預金を引き出せる仕組みです。
この制度は、2019年7月に施行された「改正相続法」によって導入されました。
払戻し可能な金額は、以下の計算式に基づいて算出されます。
- 相続開始時の預金額×1/3×払戻しをする相続人の法定相続分
ただし、1つの金融機関ごとに引き出せる上限額は150万円までに制限されています。
3.1 預金払戻し制度が新設された背景とは?
相続が発生すると、次のようなトラブルや課題がしばしば発生します。
- 口座が凍結され、預金が引き出せない
- 遺産分割協議に時間がかかり、相続手続きが長引く
- 葬儀費や生活費の立替額が大きく、喪主の負担が増える
こうした問題への対応として、相続人が一定額の預金を単独で引き出せる制度が設けられました。
ただし、この制度で引き出した預金については、後の遺産分割協議で最終的に調整されることになります。
なお、「預金払戻し制度」を利用できるかどうかは金融機関によって対応が異なるため、事前に取引先の銀行へ確認しておくことが大切です。
4. 相続は予測できない…事前準備の重要性とは
本記事では、元銀行員である筆者が、相続が発生した際に注意すべきポイントについて解説してきました。
相続は、いつ起こるか予測できないものです。突然の出来事に備え、ご自身の資産状況を整理・把握しておくことが、遺されたご家族の負担を減らす大きな助けになります。
また、エンディングノートなどを活用すれば、相続人が手続きを円滑に進めやすくなる場合もあります。
相続は「ある日突然」やってくるケースも少なくありません。だからこそ、日頃からの準備が、残される人への思いやりにつながります。