来年のIPOの調達金額は、2014年の850億ドル以来最大の600億ドル以上と予想されており、投資家心理が冷え込んでいることもあって、市場活性化のカンフル剤として大型ユニコーン企業の上場に期待が集まっています。

とはいえ、公開前の高いバリュエーションが、少なくとも短期的には失望につながる恐れがあります。

IPO関連情報を提供するIPOScoop.comによると、米国内でIPOを実施した直近の100社のうち、65社の株価が公募価格を下回っています。2018年のIPOについては、公募価格からのリターンはマイナス2.3%となっています。また、IPO銘柄の上場投資信託(ETF)を運用するルネサンス・キャピタルによると、初日終値からのリターンはマイナス16.9%となっています。

また、ここ数カ月の株式市場ではハイテク銘柄が顕著に下落したことから、非公開企業のバリュエーションに圧力がかかっており、上場が見送られるケースがあるかもしれません。

そんな中、来年初めには市場を占う大型IPO案件としてリフトとウーバーの上場が予定されています。

インスティテューショナル・ベンチャー・パートナーズのゼネラルパートナーを務めるサンディー・ミラー氏は、「市場が好意的に反応すれば、より小さなユニコーンもこれに続く可能性がある」と述べています。ユニコーンとされる企業は全世界に約300社あり、1兆ドルの価値を持っていると推定されています。

IPO調査会社マンハッタン・ベンチャー・パートナーズは、リフトの公正市場価値を190億ドル、ウーバーを520億ドルとしています。想定内の価格で両社が上場を乗り切れるのかどうか、19年を占う試金石の一つとなりそうです。

報道によると、スラックは投資銀行のゴールドマン・サックス(GS)を来年のIPOの主幹事会社に起用しており、ピンタレストは早ければ4月のIPOに向けて、1月に幹事会社を検討すると考えられています。

ユニコーン投資、上場後数カ月は待つべき?

ユニコーンが上場する場合、投資家はその事業に関する基本情報を、通常IPOの数週間前に提出される申請書類で確認し、上場している他社と比較することができます。ただし、ユニコーンの資本やガバナンスの構造は、株主に優しいとは限りません。

ユニコーンには平均8種類の株式クラスがあり、ブリティッシュコロンビア大学のウィル・ゴーナル教授とスタンフォード大学のイリヤ・ストレブラエフ教授の研究によると、その一部は普通株主よりも有利な条件の転換優先株式であることが多いとしています。

ユニコーンはそれらの優先株式によって評価額が過大になっている場合があり、「普通株式はあらゆる保護を欠いており、56%過大評価されている」と同研究は指摘しています。

ファーストハンド・テクノロジー・オポチュニティーズ・ファンドのマネジャー、ケビン・ランディス氏は「単純な話で、本当に注目されているIPOであれば、バリュエーションもかなり高くなる。公開市場で購入しようとすれば払い過ぎになる。6カ月待つのが入り口として妥当だ」とアドバイスを送っています。

フロリダ大学でIPOを研究するジェイ・リッター教授は、「一つのフェイスブックにつき、誰も聞いたことのない失敗企業が100社存在する」との見方を示しています。

2019年は大型IPOの波が予想されていますが、デビュー直後のユニコーンへの投資は意外とリスクが高いことがうかがえますので、投資には慎重さが求められそうです。

参考:Why Investors Should be Wary as the Unicorns Finally Seek IPOs(BARRON'S, 12/ 21/2018)

LIMO編集部