2. 「遺族厚生年金」が改正に。見直し後の変更点とは

厚生労働省によれば、2028年4月から「遺族厚生年金制度」の改正が実施される予定です。

今回の見直しでは、これまで対象外とされていた60歳未満の夫についても、遺族厚生年金を受給できるよう制度を改める方向で調整が進められています。

また、配偶者を亡くした時点で60歳未満であれば、性別や子どもの有無、収入を問わず、遺族厚生年金が原則5年間支給される新たな制度方針が導入されます。

遺族厚生年金の見直し

遺族厚生年金の見直し

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

加えて、今回の見直しでは、遺族厚生年金は原則として有期給付とされるものの、生活状況に応じて最長65歳まで受給期間を延長できる仕組みが導入されます。

今回の改正により、これまで問題とされてきた男女間の受給条件の格差は、大幅に緩和される見通しです。

とはいえ、今回の改正がすべての家庭に影響を及ぼすわけではなく、「影響を受ける人」と「影響を受けない人」が明確に分かれます。

次章では、今回の制度見直しによって特に影響を受ける可能性が高い世帯について紹介します。

3. 遺族厚生年金の改正「影響を受ける人・影響を受けない人」とは?

最後に、遺族厚生年金の改正の「影響を受ける人」と「影響を受けない人」について確認しておきましょう。

3.1 遺族厚生年金の改正「影響を受ける人」はどんな人?

改正後は、制度の年齢基準が段階的に引き上げられ、60歳未満かつ子どもがいない場合は、原則として5年間の有期支給となる見込みです。

この変更により、妻に対する保障は全体的に縮小される方向にあり、将来的には受給できる年金額が減少する可能性が高いと考えられます。

一方で、これまで55歳未満では受給資格がなかった男性については、今後は年齢にかかわらず遺族厚生年金を受け取ることが可能になります。

60歳未満かつ子どもがいない場合

60歳未満かつ子どもがいない場合

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

なお、制度の適用開始は男女ともに2028年4月とされていますが、女性に対しては急激な影響を避けるため、約20年をかけて段階的に改正が進められる予定です。

そのため、2028年度時点で妻が40歳未満の世帯では、将来的に受給条件が大きく変わる可能性があり、影響を受けやすいと考えられます。

3.2 遺族厚生年金の改正「影響を受けない人」はどんな人?

前章では、遺族厚生年金の改正によって影響を受ける方について解説しましたが、一方で、今回の見直しの影響を受けない方もいます。

以下のいずれかに該当する場合は、今回の制度改正による変更の対象外となり、影響を受けることはありません。

  • 既に遺族厚生年金を受給している方
  • 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方
  • 18歳年度末までのこどもを養育する間にある方の給付内容
  • 2028年度に40歳以上になる女性

上記に該当する方は、今回の制度改正後もこれまで通り遺族厚生年金を受給することができ、支給条件に変更はありません。