最近「不支給の増加」という報道で注目を集める障害年金。厚生労働省が6月に公表した調査報告書でも、新規裁定における不支給割合の上昇が指摘されました。今回は、令和5年度の統計をもとに、新規裁定の約7割を精神・知的障害が占める支給傾向について解説。さらに、障害年金の「2階建て」の仕組みや等級ごとの支給額、加算制度についても詳しくご紹介します。

1. 【障害年金の支給】「全体の約7割が精神障害・知的障害が最多」

障害年金は病気やけがにより生活や仕事に支障が出た場合に支給される公的年金で、現役世代の所得保障の役割も果たします。対象となるのは、事故による後遺症だけでなく、視覚や聴覚、肢体不自由といった身体的な障害、さらにはがんや糖尿病などの内部疾患、精神疾患など多岐にわたります。

障害年金を受給するには資格認定が必要で、初めての申請を「新規裁定」、継続受給の申請を「再認定」と呼びます。「障害年金は、どのような障害に対して多く支給されているのか?」

年金機構が令和6年9月に発表した「障害年金業務統計(令和5年度決定分)」の診断書の種類別支給件数についてみていきましょう。

令和5年度 診断書種類別件数①診断書種類別支給件数2/5

令和5年度 診断書種類別件数①診断書種類別支給件数

出所:日本年金機構「障害年金業務統計(令和5年度決定分)」

障害年金の【新規裁定】と【再認定】に分けて解説します。

年金機構が発表した令和5年度のデータによると、新規裁定では、全体の約7割が「精神障害・知的障害」で占められ、特に障害基礎年金では8割以上を占めています。肢体障害などの外部障害も15%以上を占め、身体的障害も一定の割合で支給されています。

再認定もまた、「精神障害・知的障害」が全体の約75%と最も多く、継続的な支援の必要性が示唆されます。肢体障害も次いで多く、安定的な継続支給が目立ちます。また、糖尿病などの内部障害も約11%を占め、長期的な支給の実態がうかがえます。

令和5年度の障害年金(障害基礎・厚生合計)では、新規裁定13万3614件、再認定23万5011件で合わせて約28万件を超える支給件数がありました。そのうち約7割の「精神障害・知的障害」が最多ということがわかりました。また、肢体障害や内部障害も一定の割合を占めていることがわかりました。

では、実際に「障害年金はどのような仕組みで、それぞれの障害等級でいくらもらえるのか?」障害年金の仕組みと年金額についてみてみましょう。

2. 「知っておきたい!」障害年金のしくみと支給額とは?

障害年金を受給するためには、初診日の年金加入状況や障害認定日の状態など、一定の条件を満たす必要があります。障害年金は、初診日に加入していた年金制度により「障害基礎年金」か「障害厚生年金」のどちらか、または両方が支給される「2階建て」の構造です。

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障害年金は2階建て

筆者作成

障害年金のしくみについて主に2つポイントがあります。

①障害の重さを示す等級によって年金の種類が変わる

障害の重さを示す等級によって受け取れる年金の種類が変わります。1級と2級は国民年金・厚生年金どちらでも支給されますが、3級と障害手当金は厚生年金加入者のみが対象です。

②扶養家族がいると年金額が加算される

次に、扶養家族がいると年金額が加算される制度があります。障害基礎年金には「子の加算」が、障害厚生年金には「配偶者加給年金」が設定されており、家族構成によって支給額が増える特徴があります。

2.1 令和7年度4月から改定された障害年金の支給額とは

障害年金の支給額は、物価や賃金の変動に応じて毎年見直しされます。

障害基礎年金の年金は1級と2級のみ

障害基礎年金の年金額(令和7年4月分から)4/5

障害基礎年金の年金額(令和7年4月分から)

出所:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」

障害基礎年金は1級と2級のみ支給されます。令和7年4月から障害基礎年金の支給額は、1級が年額103万9625円(一部は103万6625円)、2級が83万1700円(一部は82万9300円)となっています。昭和31年4月2日以降に生まれたかどうかで金額に若干の差はあります。また、扶養する子どもがいる場合には加算があり、子ども2人まで各23万9300円、3人目から各7万9800円が支給額に加算されます。

障害厚生年金の年金は1級・2級・3級

障害厚生年金の年金額(令和7年4月分から)5/5

障害厚生年金の年金額(令和7年4月分から)

出所:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」

障害厚生年金は1~3級のすべてが対象で、会社員や公務員の加入期間中の給与額に応じた「報酬比例」の金額が基本です。1級と2級には配偶者加給年金として23万9300円が加算されます。3級は報酬比例額のみ支給され、最低保証額は約62万円です。なお、障害の程度が3級に満たない場合は一時金として障害手当金が支給されることもあります。

3. まとめにかえて

今回は障害年金の支給傾向をふまえ、障害年金の対象となる病気や基本的なしくみなど解説しました。

まとめると、

  • 新規裁定も再認定も「精神障害・知的障害」が最多の支給傾向がある
  • 障害年金は「2階建て」構造、初診時の年金加入状況や等級により種類は異なる
  • 支給額は等級や扶養家族の有無、加入期間中の給与水準により変わる

障害年金は、病気やけがで困難に直面した際に、私たちや家族の生活を支える大切な社会保障制度です。正しい知識を持ち、いざというときに備えることが、自分自身や大切な人を守ることにつながります。

参考資料

村岸 理美