「人生100年時代」が現実となり、老後の生活を支える公的年金への関心が高まっています。しかし、総務省の家計調査からは、年金で暮らす65歳以上の無職夫婦世帯が毎月赤字となり、貯蓄を取り崩しているという厳しい実態が見えてきました。
この記事では、まず「ひと月の生活費はいくら必要なのか?」という、最も気になる高齢者世帯のリアルな家計収支データに着目し、老後のお金事情を深掘りします。
年金受給額の個人差や男女差がある中で、不安を解消するためには、年金の原則65歳受給だけでなく、「繰上げ(減額)」や「繰下げ(増額)」という戦略的な選択肢を検討することも大切です。
この記事では、今のシニア世代のリアルな家計簿を読み解きながら、長寿リスクに備えるための賢い年金の受け取り方や、公的制度を補う「私的な備え」について、ご自身の計画と照らし合わせてわかりやすく解説します。
1. 【生活費】65歳以上、無職夫婦世帯「みんなの平均」はいくら?リアルな家計簿
老齢年金の受給スタート年齢は65歳。この年齢を仕事からリタイアする目安と考える人もいるでしょう。
総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」から、標準的な65歳以上の無職夫婦世帯の家計収支に関するデータを見ていきます。
1.1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)
収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金):22万5182円
支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590円
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
- うち諸雑費:2万2125円
- うち交際費:2万3888円
- うち仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円
- 直接税:1万1162円
- 社会保険料:1万9171円
家計収支
- ひと月の赤字:3万4058円
- エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.8%
- 平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):115.3%
この世帯の毎月の収入は25万2818円です。そのうち約9割にあたる22万5182円が、公的年金などの社会保障給付で占められています。
一方で支出の合計は28万6877円にのぼります。内訳を見ると、いわゆる生活費にあたる消費支出が25万6521円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万356円となっています。
家計状況を示す指標として、エンゲル係数は29.8%、平均消費性向は115.3%です。この夫婦世帯は毎月3万4058円の赤字を抱えていることになります。
そしてこの赤字は、主に貯蓄の取り崩しなどで補填していくことになるでしょう。
ただし上記の家計収支にはいくつか盲点があります。とくに「住居費」が1万6432円と低く設定されている点や、支出項目に「介護費用」が含まれていない点には留意する必要があります。
これらの費用は世帯の状況により大きく変わります。「わが家の場合はどうか」を考えていく必要があるでしょう。
