日本労働組合総連合会(連合)の調査結果によると、2025年の平均賃上げ率は2年連続で5%を超えるものとなりました。
ただし、数年前までは「失われた30年」と呼ばれるように、長期間にわたり給与がほとんど上がらない状況が続きました。
本記事では、失われた30年の間に起こった給与や働き方などに関する様々な変化について解説します。
今後の働き方を考えるうえでも、これまでの流れを整理して覚えておきましょう。
1. 会社員の平均給与は30年前とほぼ同じ
国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均給与は460万円です。
1993年が452万円であったことから、日本の会社員の給与は約30年間、ほとんど変わらなかったことになります。
1990年以降のバブル崩壊(株価や地下の大幅な下落)以後、日本経済は長期にわたり経済が低迷し「失われた30年」と呼ばれました。
2. 日本人の給与が増えなかった原因
30年間ほとんど給与が増えなかった主な要因のひとつは、企業の賃金コスト抑制です。景気低迷により企業業績が悪化し、コストを抑えることで企業が収益の確保を図ったからです。
また、企業業績の先行きが見通せない中、仕事の繁閑に応じた雇用調整が容易で賃金の低い「非正規雇用」を拡大したことが、給与の伸び抑制に拍車をかけました。
「就職氷河期世代」と呼ばれる正社員になることが困難な時代を経て、低賃金の人が増えました。
また、非正規雇用労働者の増加は、女性や高齢者の就業率が高まったことも要因となっています。
ここまで、会社員の平均給与の推移と30年間給与がほとんど上がらなかった要因について解説してきました。
次章では、非正規雇用の拡大のほか、この30年間に起こった給与や働き方などに関するさまざまな変化をいくつか紹介します。
3. 週休二日制導入など労働時間の低下
高度成長時代に働き過ぎが社会問題となり、改善策の1つとして週休二日制が導入されました。1989年には金融機関で、1992年には国家公務員の完全週休二日制が始まるなどして、現在では週休2日制が当たり前となっています。
また、労働条件の改善や景気低迷の影響などもあり、労働者1人あたりの労働時間数は大幅に減少しています。
4. 多様な働き方の浸透
さらに、政府が推進する働き方改革が浸透し始め、ワークライフバランスを実現するなどの目的で多様な働き方を求める人が増えています。
人手不足に悩む企業の中には、人材確保対策として多様な働き方を積極的に導入するところも増えています。
多様な働き方を実現するための主な制度は次の通りです。
- リモートワーク・テレワーク
- フレックスタイム制度
- 短時間勤務
- 副業・兼業の許可
- 育児休暇(男性育休を含む)など休暇取得推進
5. 少子高齢化による労働力人口の減少
少子高齢化が進み、生産年齢人口(15歳~64歳)も減少しています。生産年齢人口は1995年に既にピークを迎えており、将来的にも大幅な減少が見込まれています。
生産年齢人口の減少に伴い、人手不足の深刻化や経済成長率の低下などさまざまな問題が発生しています。また、高齢労働者の割合が高まり、労災事故の増加などが懸念されます。
6. 国民負担率の増加も
国民負担率とは、国民所得に占める税金や社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)などの合計額の割合のことです。
少子高齢化の進展は、国民負担率にも大きく影響しています。高齢者を支える現役世代の社会保険料が増えて、国民負担率は大幅に上昇しています。
- 1993年の国民負担率:36.3%
- 2025年の国民負担率:46.2%
給与が上がらず国民負担率が増加すると、実質的な手取り額は少なくなります。負担(税金や社会保険料の支払い)と受益(医療サービスや年金などの受給)のバランスをどのように均衡させるかは、日本の社会保障制度、更には我々の生活に直結する大きな課題と言えるでしょう。
7. まとめ
近年、賃金や物価の上昇が大きな話題となっていますが、バブル崩壊後の「失われた30年」の間、会社員の給与はほとんど上がりませんでした。企業業績が低迷し、企業が賃金コストを抑制したり、非正規雇用を拡大したことなどが原因です。
ただし、少子高齢化により人手不足が深刻化したり、多様な働き方を求める労働者が増えたりして、給与や働き方に関する環境が大きく変化しています。
ここ30年間の変化を理解するとともに、これからの働き方を考えるときに活かしてみましょう。



