老後、公的年金を受給するようになっても年金支給額は固定というわけでなく、主に年に2回変わる可能性がある場合があります。
一つは「年金額の改定」。毎年度、年金は物価変動率や名目手取り賃金変動率に応じて改定を行います。4月分の年金から改定されるため、6月支給分(4月分・5月分を支給)から年金額が変わる人もいます。
もう一つが税金や社会保険料の変化がある場合です。年金生活になっても基本的に税金や社会保険料を支払いますが、これらの金額が変わる場合、多くは10月支給分より年金額が変わります(※自治体によって異なる)。
今回は「10月支給分からの年金が増える人・減る人もいる」理由について解説をしていきます。
1. 10月支給分からの年金が増える人・減る人も
公的年金からは、税金や社会保険料(健康保険料・介護保険料など)が天引き(特別徴収)されます。
10月支給分からの年金が増える人・減る人もいる理由は、年金から天引きされる住民税と社会保険料の計算が、二段階(仮徴収・本徴収)のしくみになっているためです。
1.1 仮徴収とは
年金から天引きされる住民税や国民健康保険料などの社会保険料は、前年の所得をもとに計算されます。しかし、その正式な年額が確定するのは毎年6月~7月頃です。
そのため、金額が確定していない年度前半(4月・6月・8月支給分の年金)では、まず前年度2月と同額が暫定的に天引きされます。これを「仮徴収」と呼びます。
1.2 本徴収とは
前年の所得が確定し、その年度に支払うべき社会保険料の正式な年額が決まると、徴収方法が切り替わります。
まず、確定した年額から、仮徴収として支払った合計額を差し引きます。そして、残った金額を年度後半の支給回数で割って天引きします。これが「本徴収」です。
多くの場合、本徴収は10月支給分からですが、自治体によっては8月から始まることもあります。
前年の所得が増加すると、秋以降の年金の手取り額が想定外に減ってしまうことがあるため注意が必要です。
例えば、以下のように前年の課税所得が増えるケースがこれにあたります。
- 不動産の売却や退職金の受け取りで、一時的に大きな所得があった
- 年金以外にパート収入や不動産収入などがあった
- 配偶者控除などの各種控除の適用がなくなり、課税対象額が増えた
このような理由で前年の所得が増えた場合、年度後半の「本徴収額」が、前半の「仮徴収額」に比べて大幅に高くなることがあります。
その結果、秋以降に天引きされる金額が増え、年金の手取りが大幅に減ってしまう可能性もあるのです。ご自身の状況をあらかじめ確認しておくと安心です。