6. シニアの暮らしはどう変わる?「年金制度改正」の全体像
2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が参議院本会議で可決され、法律として成立しました。
この改正は多様化する働き方や家族構成、ライフスタイルを踏まえた年金制度を目指すものです。また、私的年金制度の拡充や所得再分配の強化などによって、シニアの暮らしの安定に繋げることなども大切な狙いです。
今回の改正の全体像を見ておきましょう。
6.1 主な改正内容
社会保険の加入対象の拡大
- 中小企業において短時間で働く人などが、厚生年金や健康保険に加入し、年金増額などのメリットを受けられるようにする
在職老齢年金の見直し
- 年金を受け取りながら働くシニアが、年金を減額されにくくなり、より多く働けるようにする
遺族年金の見直し
- 遺族厚生年金の男女差を解消。子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
- 月収が一定以上となる人が、賃金に応じた年金保険料を負担し、現役時代の賃金に見合った年金を受給しやすくする
その他の見直し
- 子どもの加算などの見直し、脱退一時金の見直し
- 私的年金の見直し:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)加入年齢の上限引き上げなど
上記の改正内容からも、公的年金は「老後の受給額」だけの話ではなく、現役世代の働き方やキャリアプラン、人生設計とも深い関わりを持つことが分かります。
7. 公的年金だけでは足りない今、自助努力で備える
物価上昇の影響で、多くの世帯において公的年金だけでは「理想の老後生活」に必要な資金が不足する時代になっています。そのため、現役世代のうちから「自助努力」で準備を進めることが大切です。
しかし、現在は銀行預金の金利が非常に低いため、資産運用も選択肢の一つとなっています。資産運用にはリスクの高いものから低いものまでさまざまな種類がありますが、いずれの方法も基本的にリスクが伴います。
だからこそ、まずは自分でしっかりと調べ、自分に合った運用方法を選ぶことが重要です。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 日本年金機構 年金用語集「さ行 受給資格期間」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
奥田 朝