60歳代を迎え、これから本格的な老後生活が始まるおひとりさまの中には、貯蓄や年金、生活費などについて不安を感じている方もいるでしょう。

老後をおひとりさまで暮らす場合、生活費などを自分でまかなわなければならず、公的年金だけでカバーできなければ貯蓄を切り崩すなどの対策が必要になります。

60歳代のおひとりさまは、どのくらいの貯蓄があるのでしょうか。

また、公的年金は原則として65歳から受給開始となりますが、年金だけで毎月の生活費は足りているのでしょうか。

60歳代のおひとりさまの貯蓄額や年金受給額、生活費などのリアルな実態を確認していきます。

1. 60歳代のおひとりさまの貯蓄額

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表している「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」によると、60歳代のおひとりさまの貯蓄額は、平均値が1679万円で、中央値が350万円です。

平均値とはデータの値の合計をデータの個数で割った値のことです。

データの全体を把握しやすいですが、極端に大きなまたは小さな値があると、その影響を受けやすく実際の平均とはかけ離れることがあります。

一方、中央値とはデータの値を小さい順に並べたときに、ちょうど真ん中になる値のことです。

データの極端な値に左右されずに、実態に近い中心値が把握しやすいですが、全体を把握するには適していません。

そのため、平均値と中央値の双方を合わせて見ることが大切です。

調査結果を見ると、平均値は1679万円ですが中央値は350万円であるため、高額な貯蓄額のある世帯が値を引き上げていると考えられます。

そのため、実際の平均額は1679万円よりも少ない金額になる可能性があるでしょう。

では、貯蓄額ごとの世帯割合を見てみましょう。

60歳代のおひとりさまの貯蓄額で最も多いのは、「金融資産なし」世帯で27.7%を占めています。

約4世帯に1世帯が、貯蓄がない世帯になるという状況です。

しかし、2番目に多いのが「3000万円以上」の貯蓄を有する世帯で、16.8%存在します。

平均値の2倍ほどの貯蓄を有していることになり、貯蓄なしの世帯との差が大きくなっていることがわかります。

3000万円以上の貯蓄があれば、老後生活において急な出費があっても対応できるでしょう。

しかし、貯蓄がなければ対応が困難になります。老後の生活費を公的年金だけでカバーできれば良いですが、不足する場合は貯蓄を切り崩す必要が生じるため、できるだけ貯蓄を増やしておけるのが理想です。

では、現在のシニア世代は公的年金をどのくらい受給しているのでしょうか、次章で確認していきましょう。