3. 今後の年金の見通し
公的年金の給付水準は、今後徐々に低下する見通しです。
給付水準は賃金や物価の変動率に応じて毎年改定されますが、「マクロ経済スライド」という仕組みによって給付水準が抑えられるからです。
2025年度の改定では、名目手取り賃金変動率(2.3%)にマクロ経済スライドによる調整(▲0.4%)を加えて改定率が1.9%となりました。
2024年度の公的年金の財政検証(過去30年投影パターン)では、老齢基礎年金の給付水準は将来的に現在の70%程度になる見込みです。
2025年5月30日に衆議院で可決された年金制度改正法案には、「将来の基礎年金の給付水準の底上げ」が盛り込まれていますが、実際には現在の70%程度に低下する給付水準を90%程度に抑えるというものです。
給付水準がアップするわけではないので注意しましょう。
4. まとめにかえて
総務省の家計調査によると、2024年度の無職夫婦世帯の家計収支の平均は、収入が月25万2818円、支出が月28万6877円です。
毎月約3万4000円の赤字となっているため、2025年度の年金額が1.9%の増額になったからといって「老後は安定」とは言いにくいでしょう。
さらに、「マクロ経済スライド」によって将来の年金の給付水準は下がる見込みです。
老後の収入と支出、給付水準の低下を見込んで、早めの老後資金準備が必要です。
参考資料
西岡 秀泰