3. 2025年度は1.9%増!年金の基本的な改定ルールとは?

公的年金の支給額は、基本的に毎年見直しが行われる仕組みとなっています。4月に改定されて、6月の支給日から実際に金額が変更されるケースが多いです。

令和7年度の年金額の改定について

年金の上昇幅は物価上昇率に追いついていない

出所:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします

厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」によると、2025年度時点では、見直しのときには「物価変動率」「名目手取り賃金の変動率」「マクロ経済スライド調整」の3つの要素が加味されました。

物価変動率は、前年の消費者物価指数の上昇率を参照します。また、「名目手取り賃金変動率」は、2年度前から4年度前までの3年度の実質賃金変動率の平均に対して可処分所得割合の変化を調整した比率です。

それぞれの変動率は次のとおりとなります。

  • 物価変動率:2.7%
  • 名目手取り賃金変動率:2.3%

なお、名目手取り賃金変動率の計算は以下のように行われています。

名目手取り賃金変動率(2.3%)= 実質賃金変動率(▲0.4%:2022年度~2024年度の平均)+ 物価変動率(2.7%:2024年度の値)+ 可処分所得割合変化率(0.0%:2022年度の値)
(出所:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」)

これらの中から「低い方」を参照するため、2025年度は賃金変動率の「2.3%」が採用されます。ここに「マクロ経済スライドによる調整」を加える仕組みです。

「マクロ経済スライドによる調整」とは、公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びを踏まえて支給額を調整するものです。少子高齢化により保険者が減少し、また長寿により一人あたりの平均的な受給期間が延びると、現役世代からの支払額が減少、支給総額は増大するため、年金制度の維持が難しくなります。

そこで、一人あたりの受給額を減らすことで、将来世代の支給額を確保し、健全な年金制度を維持するために「マクロ経済スライドによる調整」がおこなわれています。2025年度の場合は、▲0.4%の調整を加える結果となりました。

計算式は以下のとおりです。

マクロ経済スライドによるスライド調整率(▲0.4%)= 公的年金被保険者総数の変動率(▲0.1%:2022年度~2024年度の平均) + 平均余命の伸び率(▲0.3%:定率)

以上により、賃金変動率の「2.3%」からマクロ経済スライドによるスライド調整率「▲0.4%」を減らし、最終的な改定額は「1.9%」となります。

支給額を金額でみると増加はしていますが、物価上昇率「2.7%」と比べると増加率は低くなっています。支給額以上に商品の価格が高くなっているため、年金世代はよりゆとりの少ない生活を強いられる形となります。

続いては、年代別の厚生年金・国民年金の平均額をみてみましょう。