雨が多く、視界の悪化や路面のスリップが気になる梅雨の時期。特に高齢ドライバーにとっては、事故リスクが高まる季節でもあります。

2024年に交通事故で命を落とした人の半数が65歳以上のシニア世代でした。今回は警察庁が発表した「令和6年における交通事故の発生状況」をもとに、高齢ドライバーが知っておきたい事故傾向とともに、自賠責保険・任意保険の補償内容についてファイナンシャルプランナーの視点で解説します。

1. 【交通事故による死者数】65歳以上が増えている

まずは、2025年2月27日に警察庁交通局で発表された「令和6年における交通事故の発生状況について」をみていきましょう。

1.1 交通事故で命を落とした人の半数が65歳以上

2024年、日本全国で交通事故により亡くなった人は2663人。そのうち65歳以上の高齢者は1513人と、実に半数を超えています。

交通事故で亡くなった人は10年間で大幅に減少しましたが、2024年はそのうち56.8%が65歳以上を占めており、高齢者の割合は依然として高水準です。

事故全体は減っても、高齢ドライバー・歩行者への対策が重要な課題となっています。

1.2 75歳以上高齢ドライバーによる死亡事故は、75歳未満の約2倍

75歳以上の高齢ドライバーによって起きた死亡事故件数の推移をみていきましょう。

75歳以上高齢ドライバー(一般原付以上運転)による死亡事故件数の推移

75歳以上高齢ドライバー(一般原付以上運転)による死亡事故件数の推移

出所:警察庁交通局「令和6年における交通事故の発生状況について」

75歳以上の高齢ドライバーによって起きた死亡事故件数は令和6年で410件ありました。

死亡事故の発生率では75歳未満に比べて「75歳以上が常に2倍前後」と高く、高齢ドライバーのリスクは依然として深刻な状況がうかがえます。

1.3 75歳以上高齢ドライバーは「車両単独事故」の割合が突出して多い

75歳以上の高齢ドライバーが「どんなことが原因で死亡事故を起こしたか?」を示す事故類型別死亡事故件数についてみていきましょう。

75歳以上高齢ドライバー(自動車運転)による事故類型別死亡事故件数

75歳以上高齢ドライバー(自動車運転)による事故類型別死亡事故件数

出所:警察庁交通局「令和6年における交通事故の発生状況について」

「どんなことが原因だったのか」がわかる事故の主な類型

  • 人対車両事故:歩行者などと車の衝突
  • 車両相互事故:車と車の衝突(例えば、交差点での出会い頭など)
  • 車両単独事故:運転する車単独で起きたこと(ガードレールへの衝突、転落、急ハンドルによる横転など)
  • 列車事故:踏切などで列車と接触したケース

75歳未満の死亡事故は歩行者などと車の衝突が原因の「人対車両事故」が45.1%とおよそ半数になりますが、75歳以上の高齢ドライバーにおいては「車両単独事故」が45.5%で一番多くなります。

これは75歳未満の17.9%と比べて約2.5倍にのぼり、「自分だけの不注意」による操作ミスや体調急変などが影響している可能性が考えられます。

梅雨時期は、雨による視界不良やスリップなど、通常よりも危険な運転環境になります。だからこそ、自分が「事故を起こさない」だけでなく、「事故に巻き込まれたときの備え」も重要になります。