3. 年収500万円台「いわゆるふつうの世帯」ほんとうの貯蓄額は平均いくら?
では、先述の「平均貯蓄額」から「負債額」を差し引いた「純貯蓄額」をみていきましょう。
3.1 年収500万~550万円世帯の純貯蓄額
1793万円(貯蓄)-611万円(負債)=1182万円
3.2 年収550万~600万円世帯の純貯蓄額
1881万円(貯蓄)-702万円(負債)=1179万円
純貯蓄額を見ると、年収500万~550万円世帯が1182万円であるのに対し、年収550万円~600万円世帯は1179万円です。
その差はほんの僅かではあるものの、年収が相対的に低い層のほうが、高い層を上回りました。「年収が多いほど実質的な貯蓄も厚い」と単純に言い切ることはできなさそうです。
4. 年収500万円台世帯「家族のすがた」
さいごに、「年収500万円台」の世帯の家庭の状況についてみていきます。
4.1 年収500万~550万円世帯「家族のすがた」
- 世帯主の平均年齢・・・59.5歳
- 世帯人数の平均・・・2.85人
- うち18歳未満の世帯人員・・・0.55人
- 世帯主の配偶者のうち女性の有業率・・・40.4%
4.2 年収550万~600万円世帯「家族のすがた」
- 世帯主の平均年齢・・・56.9歳
- 世帯人数の平均・・・2.93人
- うち18歳未満の世帯人員・・・0.61人
- 世帯主の配偶者のうち女性の有業率・・・53.7%
年収500万円台世帯の「家族のすがた」を見ると、収入が近い層でも暮らしぶりは多様です。
例えば、年収550万~600万円の世帯では世帯主が比較的若く、18歳未満の子供がいる割合もやや高め。配偶者の有業率も5割を超え、共働きで子育てや家計を支える世帯の多さも推測できそうです。
一方、年収500万~550万円の世帯は世帯主の年齢がやや上で59.5歳、配偶者の有業率は4割程度です。
5. まとめにかえて
家計調査の結果から、平均的な「年収500万円台の二人以上世帯」は、年収の3倍を超える貯蓄を築き、堅実な家計運営ができている印象もあります。しかし、貯蓄の内訳や純貯蓄に加え、世帯の状況にも目を向ける必要があるでしょう。
貯蓄は預貯金中心で安定志向がうかがえますが、貯蓄と負債はセットで考えていきたいところ。貯蓄から住宅ローンなどの負債を差し引いた「純貯蓄額」で見ると、必ずしも年収が高いほど多いとは限らないでしょう。
また、持ち家世帯では、不動産の資産価値も含めて世帯全体の資産を捉えることが大切です。勤労者世帯であれば勤務先の福利厚生(社宅制度や住宅補助など)によっても、貯蓄に回せる額に差がつくでしょう。
家計のすがたは、世帯主の年齢や子どもの有無、共働き状況など、家族構成や働き方などにより世帯ごとに違います。これらが教育費や住宅ローンといった家計の優先順位に大きく影響し、結果的に貯蓄額にも反映されるでしょう。
「標準的」とされるこの年収層の家計のすがたをのぞいてみることは、これから家庭を持つ若い世代がマネープランを考える際のヒントとなるかもしれませんね。「わが家の場合はどうか?」に当てはめて考えてみましょう。
参考資料
吉沢 良子